公共機関の保存資料にも影響が

 ビデオテープの寿命が尽きることで困るのは、個人だけではない。学校などの教育機関や、図書館、映像のアーカイブ施設、美術館といった公共団体が保管するアナログテープのデジタルファイル化も、今後の大きな課題となっている。ユネスコとIASAが警鐘を鳴らしたのは、こうした歴史的な文化資産がビデオテープの寿命とともに失われる可能性があるからだ。

 ユネスコとIASAが2019年7月から2020年5月までに実施した調査によると、回答した76カ国の機関・施設のうち29%は、磁気テープのデジタルファイル化を計画していなかった。さらに、44.8%がデジタルファイル化したくても十分な資金を確保できないと回答した。

 2021年10月に開催された「世界視聴覚遺産の日」の記念イベントで、オーストリア映画博物館長ミヒャエル・レーベンシュタイン氏は、磁気テープを取り巻く問題を商業ベースで解決することは難しいため、さまざまな関連機関や制作者、技術者、政府などが連携して対応しなければならないと訴えている。

 公共性の高い内容から個人のお宝映像まで、ビデオテープにはさまざまな“思い出”が詰まっている。「2025年問題」をきっかけに、貴重なアナログ映像をデジタル化して保存する意義について、改めて考えてみてもいいだろう。