協議会のもう一人の共同代表のチェ・デヒュンさんは「僕は日本が大好きで、2008年から毎年、日本に行っていた」と述べる。チェ代表は、2005年から、釜山を流れる別の川の生態系を回復する活動を始め、2006年には全国にある川の市民運動をつなげることに力を注いだ。問題は現場にあると思い、川沿いを歩くうちに歩くことが趣味となった。カエルが好きで、出会うと観察して写真も撮る。「両生類は気候変動に敏感だから大切だ」と目をキラキラさせる。
そんなチェ代表も、2010年のCOP10で愛知県を訪れた。
「長良川河口堰のことを知って2015年に見に行った。そこで、リアルタイムで塩分濃度をモニタリングしていることを学び、2016年に韓国でもそれを提案して実現した。それは開門に向けた重要な一歩になりました」というから驚きだ。
河口堰閉め切りの影響
3日間の視察最終日には、協議会の案内で、ナクトゥンガン河口堰開門の成果をまだ実感していない漁業者の話も聞くこともできた。釜山市水産業協同組合のオ・ソンテ組合長だ。
「河口が開門されると、国で一番豊かな川になる。かつてはカニが漁の邪魔になるほど多かった。それが戻ってくると思う。しかし、8つのダムに阻まれて、上流の養分を運ぶ砂が減った。河口堰の閉め切りで塩分濃度は濃くなり、生き物の産卵する場所がない。河口堰だけではなく、8つのダム全てを無くすべきだ」と歯に衣着せぬ物言いだった。
8つのダムとは、李明博政権が4大河川事業でナクトゥンガンに建設したダムのことだ。
ナクトゥンガン河口堰がどれほどの打撃を漁業者に与えたのかは、Kウォーターの資料でも明らかだ。
視察2日目にKウォーター釜山圏支社で行われた「韓日 河口汽水生態系復元技術交流会」で示された資料によれば、河口堰建設前の1979年には年間1万3789トンの漁獲があったシジミが、1989年には123トンと激減。塩分、底質の粒度、浸水、有機物汚染などが原因だと推定している。