人口増は「政治的リスク」、「計画外の出産をなくすべき」と提言

 さらに「ウイグル族の多い新疆南部で家族計画政策(産児制限)が十分に実行されておらず、計画外出産が比較的深刻になっている」「過激な宗教思想などの影響で避妊に消極的な人もいる」と主張。ウイグル族と漢族の人口差が広がれば「過激な宗教思想が浸食して世俗的な体制を否定し、暴力的なテロ活動を行ったり、漢族を拒絶したり憎んだりしやすくなる」「より大きな政治的リスクが生じる可能性がある」とした上で「少数民族の人口抑制政策を確実に実行し、計画外の出産をなくすべきだ」と提言していた。

 この論文が書かれたのは2017年、陳全国氏が新疆トップに就いた翌年だった。

 米政府は2020年7月、新疆での人権抑圧を巡って陳全国氏へのビザ発給を制限し、資産を凍結する制裁を発表。2021年1月には、中国政府によるウイグル族らへの弾圧を、国際法上の犯罪となるジェノサイドと認定した。

 欧州は国連機関を含む調査団の受け入れを求めており、翌年2月4日に開幕する北京冬季五輪のボイコットを求める声も出ていた。民族集団虐殺の防止を目的とした国連のジェノサイド条約は「集団内の出生防止を目的とした措置を課すこと」も集団虐殺に当たると明記している。

 米国などが「新疆で不妊手術が強制されている」と指摘する中、中国政府系シンクタンク、中国社会科学院傘下の研究機関は2020年9月、「新疆の女性たちは自ら望んで不妊手術を受けている」と主張する文書を発表。2018年の出生率は「法に基づき『計画超え出産』を管理」した結果、大幅に下落したと強調した。

 ただ、実際には共産党組織が住民への「宣伝」や「管理」を強化し、広い範囲で住民にまとめて手術を実施したとの指摘がある。