火力は「CO2対策費用」なる“重税”で高コストに
もっとも、このキロワットアワーあたり4.2円という石炭火力発電所の燃料費は、図1には入っていない。同じ資料の78ページに出てくる数字だ。政府担当者が、安いことがバレるのを嫌がったのだろうか。姑息である。
石炭に次いで安いのがLNG火力である。LNG火力の燃料費は図1では8.1円となっている。だがこれはガス価格が高い場合で、資料の79ページを見ると6.0円という数字もある。この数字をベースにすると、既存のLNG火力発電所を維持し、利用し続けることが、6.0円で3番目に安い。
なお、上述したように資料78および79ページに出てくる、石炭で4.2円、LNGで6.0円という燃料費は、いずれも国際エネルギー機関(IEA)の「表明公約シナリオ」によるものだ。つまり既存の諸国政府が表明した公約に基づく予測である。仮に世界全体で2050年に本当に脱炭素するというなら、石炭価格もLNG価格も暴落するので、これよりもはるかに安くなる。
さて、2040年に運転開始するという発電所を想定した図1を見るとLNG火力も石炭火力もずいぶんとトータルのコストが高く見えるが、これにはトリックがある。
「CO2対策費用」なるものが大きく上乗せされている。これは、CO2に対して重税を課した場合のコストということだ。本当のコストはといえば、それを差し引いたものだから、LNG火力で言えば19.2円マイナス7.1円で12.1円である。燃料費が上述のように6.0円なら発電コストは10.0円まで下がる。
同じように計算すると、石炭火力の発電コストは8.7円となる。
つまり、2040年の新設発電所で一番安いものは図1には示されておらず、本当は石炭火力が8.7円で一番安い。そしてLNG火力は10.0円で二番目に安い。
図1の右側には、LNG火力以外に、水素だとか、アンモニアだとか、CCS付などがいくつも並んでいる。
だがこれらのうち、CO2排出を少なくする技術(図中の「CO2対策費」が少ないもの)の発電コストは、いずれも高い。水素発電はキロワットアワーあたり29.9円、アンモニア発電は23.1円、CCS付LNG火力は19.2円、CCS付石炭火力は27.6円などとなっている。