再稼働に向けたリスクと対策

 このようにして見てくると、再稼働(そして新設・増設)を進めることの便益は大きく、再稼働させないことのリスクは大きい。では現在、どのようなリスクが再稼働に向けての協議の俎上にあるのだろうか。

 筆者が今回視察した柏崎刈羽原発では、再稼働に向けて燃料が装荷された7号機について、「大雪などで交通状況が悪くなったときに過酷事故が重なった場合の避難」の在り方が自治体との協議で議論になっていて、道路整備などが行われることになっている*4

*4朝日新聞デジタル(2024年9月7日)より

 過酷事故とはいっても、代替熱交換器車や代替循環冷却系などの安全対策を強化した結果、少なくとも10日間はフィルタを通して行う放射性物質の放出には至らないので、万が一のことがあっても、それだけ時間があれば避難はできるのではないか。

フィルタベント据え付け工事の様子。万が一、放射性物資の放出が必要となった場合でも、このフィルタベントを用いることで、外気への放射能物質をほぼ除去して排気が可能となる(写真提供:東京電力ホールディングス、以下も)
貯水池の工事の様子。事故で通常の冷却機能が失われた場合、この貯水池を用いて原子炉を冷却する

 6号機と7号機よりも海抜の低い場所に立地する1号機から4号機については、海抜15メートルの鉄筋コンクリート製の防潮堤を50ブロックに分けて1キロメートルにわたり築いた。

 それに対し「地震によって地盤の液状化が起きて、防潮堤がずれ、ブロック間から津波が侵入する可能性がある」ことが東京電力と原子力規制委員会との間で論点になっている。この点、7号機の再稼働に関しては安全上で問題となることはないという評価が出ているが、1~4号機を再稼働する場合には、何らかの対策が必要とされている。

 だが、これはいったいどの程度のリスクであり、そのために再稼働を止めるべきなのだろうか。