アイドルからの脱却

 そんな“ミポリン”も20代後半に差し掛かった1990年代半ば以降は“俳優”としての活動に重きを置いていきます。

 その転機となったのが、1995年の映画『Love Letter』ではないでしょうか。岩井俊二監督の長編映画デビュー作でもあったこの作品で、一人二役の難役に挑んだ彼女は、ブルーリボン賞、報知映画賞、ヨコハマ映画祭などの主演女優賞を数多く受賞。さらにこの2年後の1997年には竹中直人監督の『東京日和』に出演。この作品でも高崎映画祭で主演女優賞を受賞しています。

 ドラマの方でも、木村拓哉と共演したミステリー『眠れる森』(1998年/フジテレビ系)、金城武と共演した『二千年の恋』(2000年/フジテレビ系)、豊川悦司、香取慎吾らと共演の『Love Story』(2001年/TBS系)などの話題作に次々と出演し、俳優としての地位を築いていきました。

 しかし2002年に結婚し、フランスへ移住したことから第一線から一時的に退きます。30代に入ったばかりの時期だっただけに、芸能界から惜しむ声が寄せられていたとも筆者は記憶しております。

 2010年頃から徐々に映画・ドラマの世界へ復帰を果たした俳優・中山美穂。映画『サヨナライツカ』(2010年)、『新しい靴を買わなくちゃ』(2012年)、『蝶の眠り』(2018年)、コミカルな演技を見せたドラマ『貴族探偵』(2017年/フジテレビ系)や、『黄昏流星群~人生折り返し、恋をした~』(2018年/フジテレビ系)など、40歳を越え、一つ一つ作品を選びながら、作品ごとに新たな一面を覗かせていただけに、このたびの訃報は残念でなりません。

 最後に筆者の独断で、“今、もう一度観たい、俳優・中山美穂作品”を幾つか選ばせていただきました。

ドラマ・・『すてきな片想い』『おいしい関係』『眠れる森』『Love Story』

映画・・・『Love Letter』『東京日和』『新しい靴を買わなくちゃ』

 謹んで、ご冥福をお祈りしたいと思います。