3.変更された北朝鮮の無人機戦略

 2024年8月、金正恩総書記は無人機試験を視察する場で、戦略偵察および多目的攻撃型無人機だけでなく、歩兵および特殊部隊が戦術的に利用できる各種の自爆型無人機を多く開発・生産すべきであると述べた。

 前年7月の金正恩総書記とショイグ国防相の情報交換の成果を踏まえて確立した無人機に関しての北朝鮮の方針と考えてよい。

 その試験の場に登場したのが、無人機にモザイクがかけられてはいるものの、ロシア製の無人攻撃「ZALA ランセット」、イスラエル製の無人攻撃機「IAI ハロップ」に酷似したものだった。

 および、詳細不明の小型で胴体が太い無人機(飛行の可能性があるのか疑問)である。

 ロシア製とイスラエル製のものは、徘徊型自爆無人機である。

写真4 イスラエルとロシア製に似た北朝鮮の無人機

左:イスラエルIAI ハロップ、中:金正恩総書記の視察、右:ロシアZALA ランセット(出典:左:https://www.iai.co.il/p/harop、中:朝鮮中央通信、 右:https://zala-aero.com/en/news/zala-lancet-oktjabr-2024/

 その後、同年11月には、金正恩総書記は無人機試験の視察を行い、次のように強調した。

「無人機について革新的な技術を導入して、軍事力の主要手段に利用すること」

「無人機は、生産工程が単純で生産コストが少ないものであること」

「一日も早くロット生産システムを構築して本格的な量産に入ること」

 この2つの時期では、写真に登場するすべての無人機に、モザイクがかけられていた。

 特に、11月のモザイクは濃くかけられていた。

 なぜ、これまでの無人機にはモザイクがかけられていないのに、今回の無人機にモザイクをかけるのか。

 その理由は、ロシア製やイスラエル製の無人機の機能を有する無人機を製造することを隠したかったからだろう。

 北朝鮮としては、ロシア製やイスラエル製の技術を導入した徘徊型自爆無人機を製造したいと思っている。

 開発を急がせているのは、ロシアの要求によって、ウクライナ戦争に間に合わせたい希望があるからだろう。