拠出時・運用時・受け取り時のそれぞれで税制優遇

 まず、両制度に共通する「税額の軽減」という観点ではiDeCoに軍配が上がる。

 新NISAでは、最大1800万円の元本に対する売却益や分配金、配当への課税をゼロにすることができる。

 これに対し、iDeCoは運用時のみならず、拠出時は全額が所得控除の対象となる。受け取り時も控除が受けられるなど3つの段階での税制優遇があり、トータルでの税額の軽減効果が大きくなる。

 とりわけ毎年の所得税や住民税の圧縮につながる拠出時の所得控除は侮れない。この先、拠出限度額が大きく引き上げられるとなればなおさらだ(住宅ローン控除など既に大きな控除を受けている人は、その分、節税効果が限定されてしまうが)。

iDeCoとNISAの比較(出所:厚生労働省ホームページより)
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 ただし、人によってはiDeCoを優先しない方がいいケースもある。

 金融税制に詳しいベテランのファイナンシャルプランナー(FP)は、「iDeCoの特性上、若い世代にはあまり利用を勧められない」と指摘する。

 公的年金の補完制度であるiDeCoは、原則として60歳まで引き出せない設計になっている。仮にこの先、結婚、マイホームの購入、あるいは起業、海外留学、FIRE(経済的な自立と早期の退職)などでライフスタイルが変化し、急にまとまった資金が入り用になったとしても、iDeCoで拠出したお金には手が付けられない。

 つまり、「ライフプランがフィックスされない若年層では、iDeCoの節税メリットよりも“流動性の低さ”というデメリットの方が大きくなってしまう可能性が高い」わけだ。

 今回のiDeCo改革では、70歳までの就業機会確保が企業の努力義務となったことを受け、加入可能年齢の70歳未満への引き上げも検討されている。

 ちなみに、現行の加入可能年齢は自営業者や専業主婦(夫)が60歳未満、会社員や公務員、国民年金の任意加入被保険者(60歳到達時点で国民年金の加入期間が40年未満の人が60歳以降も年金制度に加入して保険料を払い、将来の年金額を増やせる制度)が65歳未満となっている。