「安全資産」も加味した上での効率的なポートフォリオとは?
ただし、効率的なポートフォリオは、接点ポートフォリオだけに限らない。
青い線は安全資産が存在するときの効率的フロンティアであり、この青線上でポートフォリオを組成すれば、いずれも効率的なポートフォリオとなる。安全資産とは、その名前の通りリスクのない安全な資産のことだ。本稿の場合は、宝くじを買わずに残しておくお金を指すものとする。
そこで、例えば10万円のお金を持っていた場合、6万円をくじの購入に充てることにして、2万8800円分の年末ジャンボ(くじ96枚)、3万1200円分の年末ジャンボミニ(くじ104枚)を買う(48%と52%の割合)。そして残り4万円はくじを買わずに残しておく、といったことが考えられる。このお金の配分法に相当するポートフォリオは、図では緑色の点となる。
緑色の点は、青線上にあるが、オレンジ色の曲線からは左上側に離れている。これは、曲線上で同じリスクのポートフォリオを組む場合と比べると、より高いリターンが得られることを意味している。
このように、宝くじを買わずにお金を残しておくこと(原点)と、接点ポートフォリオ(青色の点)の間で、効率的なポートフォリオを作ることができるわけだ。
くじを総額でいくら買うか、またはいくら残しておくかは、「どれだけリスクをとるか」ということなので、買う人のリスク選好次第となる。
以上、現代ポートフォリオ理論に類似した考え方を用いて、2つの宝くじからなるポートフォリオを組成してみた。
リターンやリスクの設定については、本稿で用いたものは1つの例に過ぎない。本稿とは違う考え方もいろいろあり得るだろう。さまざまな考え方に従って、ポートフォリオを考えてみるのも面白いかもしれない。
そもそも宝くじの買い方は人それぞれで、これが正解といえるものはない。いろいろ考えてくじを買うところから、すでに宝くじの楽しさは始まっていると言えるだろう。
【参考資料】
「宝くじ公式サイト」(全国都道府県及び全指定都市)
『証券投資論 第3版』(日本証券アナリスト協会編、榊原茂樹・青山護・浅野幸弘著/日本経済新聞社)
【篠原拓也(しのはら・たくや】
ニッセイ基礎研究所主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト。1969年東京都生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、1992年に日本生命入社。2014年から現職。保険事業の経営やリスク管理の研究、保険商品の収益性やリスク評価、社会保障制度の調査などを行う。公益社団法人日本アクチュアリー会正会員。著書に『できる人は統計思考で判断する』(三笠書房)がある。