わたしは以前から(といっても昨年からだが)、ジャッジという男が気になっていた。純粋な白人ではなさそうだが、どういう出自なのか。
身長2メートル、体重124キロで、大谷よりも7センチでかい巨漢である。それなのに、話し方は穏やかで、大谷について話すときも、大谷に敬意を払っていた。
ワールドシリーズ直前のインタビューで、ジャッジは、なぜか恥ずかしそうに大谷翔平をこのように褒めあげていたのである。
「(大谷翔平が何をやっても)もうすべてが当たり前に感じられるくらいだ。打率が残せ、パワーがあり、スピードもある。今季50盗塁(以上)を残したことはかなり賞賛されているけれど、(その凄さは)まだ十分語られていないと思う。すごいアスリートだし、球界最高の選手。このゲームの素晴らしいアンバサダーでもある」
好漢ジャッジの、誠実さが表れたインタビューだった。
ジャッジ少年の子どもらしからぬ返答
アーロン・ジャッジは、1992年生まれである。現在32歳で、大谷の2歳年上である。
詳しい事情はわからないが、生後2日目に、ウェインとパティ・ジャッジ夫妻の養子になっている。夫妻はカリフォルニア州の2000人弱の田舎町リンデンに居住し、ふたりとも教師である。
5歳の頃には、9歳か10歳に間違えられるほど大きくなったが、ジャッジ少年は「人懐っこくて行儀がよく、優しくて、まるで鳩みたいに純真な子ども」だった。
それでも並外れた身長で目立ち、心無い言葉で傷つくこともあった。
しかし両親が素晴らしく、ジャッジはかれらの教えに素直だった。両親は「身長などただの数字にすぎない。大きさが大事なのは内面、つまり親切な心とか、おおらかな態度とか、知性とか愛とか、そういうものこそ大きくなくてはいけない」と諭した。
ジャッジも、「両親を見て、僕は人との接し方を学んだんです。二人が今の僕を作ってくれました」と語っている。