「大下さんに3000万円」発言の真意は

 そして野崎氏は5月24日に急性覚醒剤中毒で亡くなった。

 その翌々日の26日、早貴被告は突然大下さんに対して「社長から伝えられていたんです。社長は『ワシが亡くなったら1000万円大下さんに上げてくれ』といっていたみたいだけど、私には『大下さんには3000万円上げてくれ』と言われていました」と言い出したのだ。遺言状もないので、野崎氏の遺産から大下さんにおカネが渡ることは考えにくいが、早貴被告はその可能性を示唆したのだ。

 この件について早貴被告や大下さんから事件直後に何度も話を聞いていたジャーナリストの吉田隆氏は指摘する。

「5月24日、ドン・ファンの死亡推定時刻の前後に大下さんは野崎氏宅に帰ってきています。さらに覚醒剤の取引現場近くにも大下さんがいたということであれば、大下さんは何か決定的なシーンを目撃していた可能性がある。もし早貴被告が犯行に関わっているのだとしたら、大下さんの口封じのために1000万円ではなく3000万円をチラつかせたのかも知れません」

 大下さんは現在健康状態がすぐれないようで証人として出廷はしていないが、彼女もこの事件のキーマンであることは間違いない。

 28人もの証人の証言により、事件の詳細が徐々に明らかになってはいるが、不可解な点もいくつか残っている。果たして、それまで覚醒剤を購入したこともなかった早貴被告のような素人が、ネットをさっと検索しただけで容易く覚醒剤を購入できるものなのだろうか。誰かが早貴被告と売人とをつないでやった可能性はないのだろうか。そして売人Xが15万円で売ったのは本当に氷砂糖なのか。

 裁判はすでに早貴被告の被告人質問に移っている。次のレポートはそちらを中心にお送りする。