インド首相も民主党を敬遠
インドとの強い関係へのコミットメントは今やワシントンの超党派の方針だ。モディ率いる政府はバイデン政権と重要な協定に署名した。
だが、モディとその支持基盤は、米民主党はマイノリティ(少数派)の権利と民主主義の保護について過度に圧力をかけてくるきらいがあると考えている。
インドでは、今年バングラデシュで「レジームチェンジ(体制転換)」をもたらしたことについて、干渉的な米国のリベラル派を責めるのが一般的だ。
インド人は、この転換によってイスラム主義者が権力の座を手に入れることを恐れている。
ハリスは家系的にインドと関係があるにもかかわらず、モディは同じストロングマン(強権的な指導者)、民族ナショナリストとして、ハリスよりもトランプに共感を抱く。
トランプ返り咲きなら中国は痛し痒し
しかし、東アジアでは、米国の同盟国がトランプ政権の誕生の可能性に深刻な懸念を抱く理由がいくらでもある。
バイデンチームは中国の力を封じ込めることを目指し、インド太平洋地域で米国の同盟システムを築き上げる仕事を成し遂げた。
だが、トランプは、日本や韓国といった米国の主要同盟国をただ乗りする国と見なしている考えを明確にしている。
また時折、台湾の防衛にほとんど関心がないこともほのめかした。
台湾が見捨てられ、アジアにおける米国同盟システムが破壊されることを切に望んでいる中国の指導部にとっては、こうしたことは心地よい音楽のように聞こえるはずだ。
一方で、トランプは中国からの輸入品に最大で60%の関税をかけることも約束した。
トランプは前国務長官のマイク・ポンペオのような対中タカ派に取り囲まれている。
もしタカ派が自由裁量を与えられれば、その場合、米国の対中政策は以前よりはるかに敵対的になる可能性がある。
多くの国の政府にとって、トランプとハリスとの決定的な違いはただイデオロギー的なものではなく、気質の違いでもある。
ハリス政権は安定的で予測可能な政権になるだろう。
トランプは再び、オーバルオフィス(大統領執務室)に荒っぽさと不安定さを持ち込むことになる。
(文中敬称略)