ハンガリーやイタリアの首相はほくそ笑む?

 しかし、欧州にも親ハリスのコンセンサスと袂を分かつ政府がある。

 イタリア首相のジョルジャ・メローニは極右に政治的なルーツを持ち、トランプとEUの仲介役を果たす良い位置につけていると感じるかもしれない。

 ハンガリー首相のオルバン・ビクトルは「MAGA(米国を再び偉大に)」をスローガンに掲げる米国の右派と特別な関係を築いた。

 MAGA派はオルバンと同じく移民への嫌悪感を抱いており、民主的な制度機構を崩したオルバンの成功から教訓を学びたいと考えているようだ。

 オルバンはトランプの勝利を、西側全体でイデオロギー的な風が自分に向かって吹いている兆候として受け止めるだろう。

 フランスの国民連合(RN)や「ドイツのための選択肢(AfD)」など、欧州のポピュリスト政党や極右政党も指南と支援を求めてトランプ・ホワイトハウスに目を向けるかもしれない。

 トランプが返り咲きを果たせば、欧州の自由民主主義国は米国とロシア、欧州域内の極右との板挟みに陥る危険がある。

サウジ皇太子とトランプ家の蜜月

 トランプが権力政治を重視し、民主主義と人権に無関心なことはEUを不安にさせる。

 だが、ベンヤミン・ネタニヤフのイスラエルとムハンマド・ビン・サルマンのサウジアラビア、ナレンドラ・モディのインドにとっては、そのおかげでトランプが好ましいパートナーになる。

 ハリスはジョー・バイデンよりもイスラエルに対して若干批判的だったため、また先約があることを理由に米議会でのネタニヤフの演説に出席するのを避けたために、イスラエル国内で懐疑的な目を向けられている。

 あるイスラエルの経営者が筆者に語ったように、「ユダヤ系米国人の80%はハリスに投票するだろう。だが、イスラエル人の80%はトランプに投票する」というわけだ。

 バイデン政権はとうの昔にMBSとして知られるサウジ皇太子を国際社会の「のけ者」にすると訴えるのをやめ、その代わりに中東での米国の影響力を強める手段として、サウジと米国の新たな安全保障条約の締結に向けて取り組んでいる。

 だが、MBSはサウジ人記者ジャマル・カショギの残虐な殺害事件後に皇太子を疎外する取り組みを民主党が先導したことを忘れない。

 また、ハリスのチームがバイデン政権のアドバイザーよりもサウジに安全保障を提供することに懐疑的である兆しにも気づいたかもしれない。

 対照的に、MBSとその取り巻きは長らく、トランプ陣営と外交、ビジネス上の緊密な関係を持ち、特に前大統領の娘婿であるジャレッド・クシュナーと親しい。