「ボランティア縮小」というタイミングを豪雨が襲った

 取材した10月5日、橋浦さんの事務所にありんこから5人ほどのボランティアが駆けつけ清掃作業が始まっていた。ありんこのボランティアは壁を切り出し、断熱材を取り出すほか、排水管に詰まっていた細かな泥土も掃除していた。

断熱材を取り出すありんこのボランティア

 橋浦さんのケースから浮かび上がるのは、今回のような二次災害におけるボランティア体制整備の難しさだ。駒澤大学教授で災害コミュニケーションを専門とし、能登にも何度も足を運んでフィールド調査を進めている柴田邦臣氏は次のように解説する。

「今回のような輪島市のケースにおいて、被災者がボランティアに家屋の清掃を依頼する経路は2つある。一つは、輪島市の社会福祉協議会が主催する『輪島市災害たすけあいセンター(輪島市災害ボランティアセンター)』に依頼するもので、橋浦さんが待たされているルート。もう一つが、すでに地域での活動を通じて市の社会福祉協議会と連携しているNPOやNGOに直接依頼するルートだ」

「石川県は、ボランティア自身が被災するリスクや、限られた人手を効率よく現地に分配することを考え、ボランティアの派遣を県が一元管理する方針を打ち出している。輪島市災害ボランティアセンターは県に歩調を合わせ、直接ボランティアは募集していない」

柴田氏も清掃作業を手伝う

 だが、豪雨災害を受けて、橋浦さんのように現場の支援では被災者が直接、NPOに依頼することで生活の立て直しが進むケースも少なくないようだ。県が構築したボランティア体制は、どのような状況に陥っていたのだろうか。

「1つ目のルートでは、市民からの要請を受けた市の災害ボランティアセンターが現地の被害状況を確認し、県に連絡して、それを受けて県が必要な人員を派遣する、という流れになる。ところが地震による現場のボランティアニーズは落ち着いてきたという見方から9月ごろから段階的に、輪島市災害ボランティアセンターを縮小・閉鎖していこうという流れになっていた」(柴田氏)

 柴田氏によると、石川県から派遣されるボランティアの数は豪雨が発生した当時、すでに減少傾向にあったという。豪雨災害が発生したのは、そうしたボランティア活動を縮小しようという矢先だった。

「豪雨被害が起き、市民からは再び、ボランティアの支援を求める声が急増した。ボランティアセンターを縮小・閉鎖する流れにあった市の社会福祉協議会は混乱状態に陥ったと思われる。支援を求める声に十分対応しきれないのは、無理もないだろう」(柴田氏)