泥のかき出しにもボランティアの助けが必要

 ところが、地震を乗り越えつつあると感じていた9カ月後の9月21日、豪雨が輪島市を襲った。事務所は1メートルほど浸水し、水がひいた後には10センチほどの泥が溜まっていた。

橋浦さんの新事務所

 このままでは事務所を開設できないと考えた橋浦さんは当初、娘と一緒に泥のかき出しを始めたが一向に終わらない。泥を全てかき出しても、水気を吸った床下や壁の断熱材が腐食しカビが繁殖したり、シロアリが発生したりするリスクもある。放置しておくと事務所が使えなくなる可能性が高い。こうした事態を避けるためには、早期に断熱材を撤去し、しっかりと乾燥させることが必須になる。

ありんこの専門部隊が取り出した断熱材

 ただ、専門の器具も知識もない橋浦さんでは床や壁を切り開き、断熱材を取り除くことはできない。「私たちだけではどうしようもない」と考えた橋浦さんは輪島市の社会福祉協議会を通してボランティアに支援を依頼した。ところが返事が遅い。市役所に勤める友人に相談すると、災害支援NPOの「ありんこ」という団体を教えてくれた。

 ありんこは災害支援に特化したNPOで、被災地の教育支援や災害後の家屋の清掃作業に関する専門的なノウハウを有している。結局、橋浦さんは「友人も『直接NPOにお願いする方が早い』とのことだったので、ありんこさんにお願いした」という。