(英エコノミスト誌 2024年10月12日号)
11月の大統領選挙で誰が勝とうと、ドナルド・トランプが米国二大政党の政策を定義し直したことは変わらない。
あと1カ月足らずで米国が直面する選択は、有権者が各候補の政策を比較考量して行うものにはならない。
カマラ・ハリス氏の計画は詳細が明確でなく、ドナルド・トランプ氏のそれは現実から遊離していることがある。
そしていずれにしても、租税政策より文化的な分断の方が有権者に行動を促している。
しかし、米国にとってもそれ以外の世界の国々にとっても、この選択は政策面においてとてつもなく重要だ。
今回の選挙のこの側面は、オハイオ州に住むハイチ移民が昼食に口にするものをめぐるおとぎ話に比べると目立たない。
本誌エコノミストが今週、大統領選の結果が最も大きな変化をもたらすと思われる分野の8種類の政策を手短に解説しているのは、この状況を緩和するためだ。
両候補の政策に見るトランプ化
すべての政策を網羅しているわけではない。2人の候補の姿勢が対照的であっても、公共政策に直接影響しないテーマは除いてある。
例えば両候補の人柄や、米国の制度さらには民主主義にとってのこの選挙の意味などは議論の俎上に載せていない。
人工妊娠中絶の問題も取り上げていない。
両候補の見解は全く異なるものの、連邦議会をどちらかの政党が牛耳る事態にはなりそうになく、これまでと全く異なる政策が展開されるには至らないと思われるからだ。
どれほど重要であろうともそうしたものを除き、大統領の権限で実行できる政策に的を絞って検討すると、驚くべき結果が得られた。
11月5日に大統領選挙人の過半数(270人)を誰が手にすることになろうと、トランプ氏のアイデアが勝利する。
選挙の争点を設定したのは、ハリス氏ではなくトランプ氏だった。米国の政策は徹頭徹尾、トランプ化されたのだ。