再び世界を目指す

 9月16日に32歳を迎えた中村だが、世界で戦う意欲は失っていない。むしろパリ五輪を逃した分、ロス五輪で勝負したい気持ちは強くなっている。

「年齢を重ねも衰えている実感はありません。故障に気をつけて、トレーニングを積んでいければまだまだ成長できると思っています。ロス五輪はちょっと先なので、まずは来年9月の東京世界陸上が目標です」

 2019年のMGCを制した中村だが、その頃よりも現在の方が〝勝っている〟部分があるという。

「地力は今の方が高いのかなと思います。あの頃はいい練習ができていましたし、勢いもありました。そこまで深く考えなくても、試合に出て結果を残せた部分があったんです。今は体と向き合って、やれている実感がありますし、練習でも当時を超えるような質の高いメニューができています。どんなレースにも対応できますし、今の方が〝強さ〟はあるのかなと思います」

 次なるターゲットは来年の東京世界陸上だ。その参加標準記録は2時間06分30秒とハイレベルだが、中村はもっと高いところを見つめている。

「2時間04分56秒の日本記録を持つ鈴木健吾選手はチームメイトですし、一緒に練習する機会も多い。自分自身も到達できるんだという思いもありますし、2時間4~5分台でコンスタントに走れるような強い選手を目指していきたい」

 今冬、中村匠吾がマラソンでどんなタイムを刻むのか。日本中から祝福を受けた〝あの日〟から、確実に成長した姿を披露する。