大きな壁にぶち当たった時は“見えないハシゴ”を探す

数々の壁を乗り越えてきた萩原さんの高い壁の乗り越え方、メンタルコントロール術とは?

 私の自己流のやり方なので、人によって合うかどうかわかりませんが、私がメンタルをコントロールする際にやっていた方法をお伝えします。

 まず1つ目は、自分が得意なことと苦手なことをすべて紙に書き出すことです。

 自分に“できること”と“できないこと”を整理しながら並べてみると、自分に合った選択肢を可視化することができますよね。そうすることで、自分のことをより客観的に理解しやすくなりますと思います。

 さらに、自分がどういう時に緊張して脈が上がってしまうかや、逆に脈を下げるにはどうしたらいいのかなど考えることもやっていました。

 2つ目は、自分でコントロールできないことは“仕方がない”と思うことです。

 たとえば、私の後輩である水泳の鈴木聡美さんが、ロンドンオリンピックの100m平泳ぎで銅メダリストを獲得した時、決勝戦でスタートのピストル音が鳴らないアクシデントが発生したんです。

 機材トラブルのため最初から仕切り直しになり、一旦、選手たちはスタート台からプールサイドに下りました。突然の出来事に選手たちの緊張が高まるなか、鈴木選手だけがにこやかに笑っていたんです。

 普通なら競技のスタートが乱れてしまうと動揺しますよね。でも、鈴木選手は「オリンピックの舞台でもこんなことが起きるんだ!」と思ったら、笑いがこみ上げてきて自然と笑顔になったと言いました。

 そのくらいリラックスした状態で、自分にはどうしようもないことを楽しみながら受け入れられた力は、本当に尊敬しました。

 そして3つ目は、なにか壁にぶち当たった時は“見えないハシゴ”を探すことです。

 一見、乗り越えられない壁だと思っても、実は“見えないハシゴ”がいっぱい掛かっていて、そのハシゴに気づけるか気づけないかで、先が大きく変わってくると感じています。

 でも、その“見えないハシゴ”を掴むためには、今まで以上に視野を広げる必要があります。応援してくれる人の言葉や、恩師がかけてくれた言葉、他競技や他業種の方々、本や新聞で読んだ言葉などに、ピンチをチャンスに変えてくれるヒントがあることも。

 その時には気づけなくても、少し時間が経ってから気づくこともあるので、それに気づけた時に、また壁を乗り越えていけばいい。私はそう思います。(文・坂本遼佑)

(本稿は動画『【シンクロLive・萩原智子】オリンピック4位の私が伝えたいこと 一生懸命の先にあったパラレルキャリア』を編集した全2回の2回目)

LIVE配信では、現在のパラレルキャリアや過去の病気、アスリートへの誹謗中傷問題、子育て、萩原さんが自身の体験をもとに出版した絵本についてお話しいただいた。

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