パはソフトバンク・ホークス、セは読売ジャイアンツ。プロ野球はシーズンもいよいよクライマックスに向かう。海の向こう、メジャーリーグでは大谷翔平が歴史的な快挙を遂げた。
前侍ジャパン監督であり、北海道日本ハムファイターズCBOの栗山英樹氏の新刊『監督の財産』が話題だ。
総ページ848。1キロ弱の本は、発売2週間で重版が決まるなど反響を呼ぶ。本書で一貫するのは、野球界の未来のために、今、指導者、リーダーが何をなすべきか、という視点である。
今だからこそ読みたい、野球界を支えた人たちの素顔を本書より紹介する
「クリ、なにやっとんじゃ!」
(『監督の財産』収録「6 稚心を去る」より。執筆は2019年1月)
2018年1月4日、心から尊敬する方が亡くなった。星野仙一さんだ。
本当にショックで、いまもまだ信じられない思いでいる。
自分が29歳で現役を引退して、第2の人生をスタートさせたとき、星野さんは中日ドラゴンズの監督だった。
キャスター・評論家時代には、海外に取材で同行させていただいたこともあり、いろいろなことを勉強させてもらった。
監督としても、本当に教わることが多かった。
星野さんとは、ドラフト会議(2017年)のときにお会いしたのが最後になった。
ファイターズは、ドラフト1位で7球団が競合した清宮幸太郎の交渉権を引き当てた。その会場で、星野さんだけは、清宮のことなどまるで頭にないかのように、
「何しとんじゃ、クリ!」
と、怒られた。日本一になった翌年、不甲斐ない成績に終わったファイターズのことだ。
「あのメンバーがいて、この成績はなんだ!」って。
まるで自分のチームのことのように嘆き、叱咤激励してくれた。
「でも、日本一になったあとって、いろいろあるよな」
と、優しいフォローのひと言もかけてくれた。
「闘将」と呼ばれた熱血漢で、険しい顔をしているイメージが強いけど、あんなに優しい人が、ああいうスタイルにしなければ戦えないほど、プロの世界は厳しいということ。ある意味、優しい人だからこそ、ああやって怒ることができたのだと思う。
そんな星野さんに、ずっと言われ続けてきた言葉がある。
「我々は、野球界に恩返しをするんだ」