ムダを根絶する、たった4文字の「最強の呪文」

 この「ECRSの4原則」をより効果的に実践する、たった4文字の「最強の呪文」があります。それが、「そもそも……」です。

 とてもシンプルで誰もが使いやすい呪文ですが、時に従来の常識をすべて打ち壊すほどの破壊力を持っています。

 周囲から一目置かれる先輩の口ぐせでもあったのですが、例えば、管理職と私たち一般社員が煩雑な業務の進め方を議論している中で、その先輩が「そもそも……、その仕事って何のためにやるの?」と全員に呪文を唱えます。

 すると、小手先の議論に終始していた中で、一度目的に立ち返り、抜本的に業務を見直す妙案が出てくることが多々ありました。

「そもそも、なぜやるの?」「そもそも、この作業プロセスって必要なの?」「そもそも、この作業ってこの順番でないといけないの?」というように、常に「そもそも?」と言葉に出すと、誰でも簡単に思い込みや制約条件を外し、うっかり見過ごしていたムダに気づくことができます。

 多くの人は、職場の当たり前や常識となっている作業やルールを疑い、カイゼンを検討することが苦手です。しかし、当たり前や常識に縛られている限りは、「なくす」という発想が困難です。

「当たり前」を排除し、作業の根っこの部分からカイゼンを検討するときに、「そもそも?」の一言が大きな効果を発揮します。

 カイゼンを行うにあたって、何より最優先するのはECRSの中で「なくす」です。「そもそも」の呪文も活用し、「まずは、なくせないか」から発想していくと、仕事の効率が圧倒的に上がります。(続く)

森琢也(もり・たくや)
株式会社クック・ビジネスラボ代表取締役。中小企業診断士

 2007年明治大学商学部卒後、トヨタグループの大手自動車部品会社(デンソー)に入社。配属された経営企画部署では、製造現場でのトヨタ生産方式の浸透、グループ会社支援など数千億円ビジネスの全体像を学ぶ。事業企画に異動後は、採算改善プロジェクトのリーダーとして、世界5拠点で生産する新製品の採算V字回復などに携わる。
 約10年の勤務後、リクルートマネジメントソリューションズに転職し、研修講師の採用・育成を担当。トヨタグループでの経験を活かして、コストと工数を大幅に削減しつつ、3年間で延べ8000人を超える40代以上ハイクラス人材を選考した。
 2020年に独立後は経営コンサル事業にて、中小企業向け事業計画作成・実行支援を行い、補助金獲得総額5億円超、採択率90%以上を達成。また、研修事業では、大企業からの直接受注を中心に累計100社以上、参加者数6000人以上に研修を実施。複数の仕事(事業)を同時に取り組んできた経験も踏まえ、組織や個人の仕事の生産性向上を支援している。