東大大学院の古川大晃(写真は2021年11月23日、10000m記録会) 写真/共同通信社

(スポーツライター:酒井 政人)

東大院生で初の箱根駅伝出場を目指す29歳

 日本インカレの男子10000m。箱根駅伝の上位校は少なかったが、強豪校とはいえないチームのエースたちが激走した。10月19日に行われる箱根駅伝予選会を見据えて。

 そのなかで一番目立ったのが「追尾走」を研究している古川大晃(東大D4)だ。6人の留学生に日本人選手で唯一食らいつく。先頭集団は5000mを14分40秒で通過。古川は何度も離れそうになりながら、残り11周付近まで先頭集団でレースを進めたのだ。

「留学生がいいペースで引っ張ってくださったので、きついながらもついていけるペースで粘ろうという感じだったんです。日本人選手で僕ひとりがついていくことになるとは思っていなくて、驚きとワクワクを感じながら走っていました」

 古川は残り4周で後続集団に飲み込まれ、最終的には30分02秒92の10位でレースを終えた。入賞には届かなかったが、東大生ランナーが強烈なインパクトを残した。

 古川は第99回箱根駅伝(23年)で関東学生連合に選出された選手。左右で別々のシューズを履くことでも話題となった。しかし、本戦での出場はかなわず、今季は“ラストチャンス”に燃えている。

「第100回大会で選抜チームがなかったのは本当にショックでした。途方に暮れてどうしようかなと思ったんですけど、復活してもらえたので、天からもらったチャンスだと思って、しがみつきたいと思います」

 古川は熊本・八代高で陸上部に入り、本格的に競技を開始。高校時代は3000m障害でインターハイ南九州大会に出場した。熊本大では3年時に全日本大学選抜(5区12位)、4年時は日本学連選抜(6区15位)の一員として全日本大学駅伝に出場している。大学時代に感じた「人と走るとなぜ楽なのか?」という疑問を解決すべく、九州大院に進学。2021年からは東大院博士課程に進み、「追尾走」を研究してきた。

 日本インカレは留学生につく想定をしていたわけではなかったが、「留学生は余裕度が高いですね。リズムの安定感というか、リラックス感みたいなところはかなりいい影響をもらえたんじゃないかなと思います」と貴重な“サンプル採取”に笑顔を見せた。そして陸上選手としては、「箱根駅伝」を大きなターゲットにしている。

「東大の大学院に進学したのは自分の研究を続けながら、箱根駅伝も走りたかったからです。箱根駅伝は今回がラストチャンスなので是が非でも走りたい。後輩に秋吉君という強い選手がいて、彼が練習でも毎回いい勝負をしてくれるので研究テーマの追尾走をしながら成長できているかなと思います」

 東大陸上部は大学院チームも学部生とは別に箱根駅伝予選会に参戦している。古川と練習をしている秋吉拓真(東大3)は日本インカレの5000mで5位(14分12秒25)に入っており、“東大コンビ”が関東学生連合のメンバーに選出される可能性は十分にある。

 なお、これまで東大院生として箱根駅伝を走った者はいない。10月9日に29歳を迎える古川は貪欲に自身の道を突き進んでいく。