合法か、違法か…「安楽死カプセル」めぐる波紋

 今回のサルコによる米国人女性の死に対し、ボームシュナイダー内相は23日、サルコの使用について「法に準拠していない」と議会で述べた。まず、製品安全法の要件を満たしていないこと。また、窒素の使用は、化学物質法の目的状況に適合しないと指摘した。これに対し、サルコを使用したスイスの自殺ほう助団体は、合法だと主張している。

 地元紙によると、サルコの使用は7月中旬にも予定されていた。その際、使用を試みた別の米国人女性(55)は、腎不全や神経系の痛みを伴う疾患など、様々な健康問題に苦しんでいたという。しかし、サルコを利用する初のケースとなる可能性があったために、この女性は当該の団体によって自身の死を「報道合戦の餌食」にされそうになったことや、死後には金は必要ないだろうと生前に使い果たすよう圧力を受けた、などと訴えた。女性は「(団体に)利用され、搾取されたと感じた」と地元紙に語っていた。

 取材したスイス紙は、女性がその後死亡したと伝えている。別の報道では、女性は恐らくスイスの別の自殺ほう助を行うクリニックで亡くなったのではないかと推測されている。

サルコのログイン画面とボタン(写真:ロイター/アフロ)

 ちなみに、現状サルコの利用は無料だ。今回のケースでは葬儀代と、窒素タンクの実費18スイスフランが支払われたとされている。団体は、サルコの運用は営利目的ではないと強調している。

 チューリヒ州議会議員は地元紙の取材に、サルコがあまりに早く実用化されたことに恐怖を感じたと話している。また、サルコの使用に責任のある者たちが「法的な抜け穴」を期待しているのではないかとも述べた。

 スイスには、国外に暮らす外国人に自殺ほう助を行う非営利団体が存在する。このため、その目的で同国を訪れることを「自死ツーリズム」と呼ぶこともある。先の議員は、サルコによって自死ツーリズムが拡大することへの懸念を示した。サルコが今後使用されないために、これを禁止するための法案提出を検討しているとした。

 物議を醸しているサルコだが、そもそも誰が開発したのか。