ヒズボラのポケベルが一斉爆発

 レバノンの親イラン武装組織ヒズボラの戦闘員が所持するポケットベルが17日、一斉に爆発し、12人が死亡、約3000人が負傷した。ヒズボラと対立するイスラエルによる仕業だと言われている。翌18日もヒズボラの戦闘員が使用していたトランシーバーなどの通信機器が相次いで爆発し、少なくとも20人が死亡、450人以上が負傷した。この攻撃もイスラエルによるものだとされている。

ヒズボラの戦闘員が所持していた爆発したポケベル(写真:Abaca/アフロ)
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 イスラエルとヒズボラは昨年10月以降、深刻な対立を回避してきたが、「今回の一連の攻撃により全面的な紛争に突入するのではないか」との危惧が急速に高まっている。

 中東情勢が再び緊迫する中、筆者が注目しているのは、イエメンの親イラン武装組織フーシ派の行動だ。

 イスラエル軍は15日、「イエメンからイスラエル中部にミサイル攻撃があり、避難途中に数人が負傷した」と発表した。フーシ派は7月にも中部テルアビブに無人機攻撃を仕掛けているが、今回は訳が違う。フーシ派は「新型の極超音速弾道ミサイルを発射した。11分半で2040km飛行した」と主張している。 

 今回のミサイル攻撃はこれまでで最も距離が長く、サウジアラビアやヨルダン、イスラエルの対空防衛システムを回避したと言われている。 

 イランはフーシ派への新型ミサイルの供与を否定しているが、フーシ派の攻撃能力がさらに向上していることは疑いようがない。

「フーシ派はシリア南部にイスラエルとの前線基地を形成している」との情報もある。

 火の粉が自らに及ぶことを恐れたからだろうか、サウジアラビアの実権を握るムハンマド皇太子は18日、「(パレスチナ国家を認めなければ)イスラエルとの国交樹立はない」と述べ、米バイデン政権が仲介するイスラエルとの国交正常化交渉にノーを突きつけた。

 再び流動化しつつある中東情勢をこれまで以上の関心を持って注視すべきだろう。

藤 和彦(ふじ・かずひこ)経済産業研究所コンサルティング・フェロー
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。