原油はだぶつき気味になっている

 IEAは12日に発表した月報で「世界の今年上半期の原油需要は日量80万バレル増えた」との見方を示した。増加率は昨年の3分の1にとどまり、新型コロナのパンデミックが起きた2020年以来、最も鈍いペースだが、下半期はさらに低調となるようだ。

 IEAは「世界の今年の原油需要の伸びは日量90万バレルになる」としており、下半期の伸びは日量10万バレルにとどまる計算だ。IEAは「『世界の原油需要は2020年代終わりまでに頭打ちになる』との予測が信憑性を増した」と結論づけている。

 需要に対する懸念から、市場では「供給過剰の兆しが出ている」との認識が広がっている。取引の決済期限が近い「期近物」よりも決済期限が遠い「期先物」より高い「逆ざや」が、9月中旬としては2020年以来の水準にまで縮まっていることがその証左だ*1

*1原油、先物に供給過剰の兆し 「逆ざや」4年ぶり低水準(9月19日付日本経済新聞)

 原油は在庫の保管のためにコストがかかるため、期先物が期近物よりも高い「順ざや」となるのが一般的だが、需要が強く品薄感が生まれると逆ざやとなる場合がある。逆ざやの傾向が弱まっていることは品薄感がなくなり、市場関係者が「原油がだぶつき気味になっている」と判断していることを意味する。

 逆ざやの現象がなくなれば、供給過剰感が強まり、原油価格の下押し圧力となると指摘されている。

 筆者は「原油価格は年末までに1バレル=60ドル割れする可能性が高い」と考えているが、唯一の攪乱要因は中東地域の地政学リスクだ。