私は、今まで自分が日本人だなんて全然意識したことはありません。でもこの取材中は、日本というものを、ふるさとというものをすごく意識しましたね。自分でもとても不思議です。
感動すら呼ぶ遺体の処置技術
──エアハース・インターナショナルは本物のプロフェッショナル集団ですね。使命感の強さはもちろんのこと、技術の凄さが伝わってきました。
佐々 ご遺体を完璧な形で、なんのぬかりもなくご遺族の元に帰すんだという使命感がとても強い。だから常に冷静であろうとします。めそめそ悲しみに浸っているような現場ではありません。
ご遺族の許可をいただいて処置の様子を見せていただいのですが、本当に生気が戻ってくる瞬間があるんです。一瞬しゃべったり、目があくのではないかと思うぐらいです。魂が吹き込まれた瞬間を目の当たりにしているような気持ちになりました。
──感動を呼ぶレベルなんですね。
佐々 感動させられます。その人の生前のそのままの形、そのままの色が戻ってきます。化粧にまったくわざとらしさがないんですね。
──根源的な化粧ということなんでしょうか。
佐々 「祈り」にも似た行為だと思います。その人の本質をつくりあげるというか。
──もはや一般的な仕事論で語れるレベルではないですね。
佐々 亡くなった人や遺族のためという気持ちはもはや「仕事」の域を超えています。あらゆる意味で彼女たちは、仕事とは何かという本質を考えさせてくれました。