木村社長はそういう状態を見て、国際霊柩送還という仕事の本質を世の中に伝えなければならないという気持ちになったようです。

──1年近く密着して取材されたわけですが、どういうことが見えてきましたか。

佐々涼子(ささ・りょうこ)
1968年神奈川県横浜市出身。早稲田大学法学部卒業。日本語教師を経てフリーライター。著書に『たった一人のあなたを救う 駆け込み寺の玄さん』(KKロングセラーズ)、編集協力として『日本一のクレーマー地帯で働く日本一の支配人』(三輪康子著/ダイヤモンド社)がある。

佐々 エアハース・インターナショナルがどんなに遺体をきれいにしても生き返るわけではありません。結局は亡くなっているわけだから、もうこれ以上はやる必要がないと思う人もいるでしょう。

 でも彼女たちは、限界までやるんです。亡くなった人のためにやってあげられることはまだある、遺族がみんなで迎えてあげられるように、まだまだきれいでおだやかな顔にしてあげられる、と思っている。そのこと自体にまず感動しました。

 また、亡くなった人を送る「弔い」という行為の本質のようなものが、彼女たちの姿から見えてきました。手を尽くして死者の国に送ってあげるという姿勢に、弔いの本質や供養の元々の意味を見たというか。それは私たちにとってとても大切なものだということに気がつき、深く考えさせられました。

──エアハース・インターナショナルの仕事を知れば知るほど、これは広く伝えなければいけないと思ったんですね。

佐々 本当にそう思いましたね。

「日本」と「ふるさと」を意識した

──本書を読んで、エアハース・インターナショナルの社員たちは愛国者だと思いました。遺体を「日本に返してあげるんだ」という気持ちを強く感じます。

佐々 愛国者という言葉が適当かどうかは分かりませんが、ご遺体が羽田空港に到着する様子や、それを迎えるご遺族を見たりすると、「ああ、自分の国に帰ってきてよかったね」という気持ちになるんですよ。

 今の時代は、みんなが自分の祖国が日本であることを意識して外国に行っているわけではありませんよね。海外で活躍することを目指して日本を飛び出した人もいるわけです。ところが亡くなると、ご遺族は日本に帰してあげたい、なんとか日本に戻してあげたい、と思う。海外の戦地での遺骨収集もそうですよね。