中国が「法律戦争」を仕掛けている(写真:AP/アフロ)
  • 中国で7月1日から、2つのルールが発効した。いずれも、中国在住の日本人や出張者がいつ逮捕されてもおかしくない内容で、注意喚起したい。
  • 例えば、中国国内で禁止されているSNSにVPNでアクセスしたり、政治的な論評をしたりすると、これまで以上に容易に拘束されるかもしれない。
  • 最近、中国は自国の権威主義的な法律を「武器化」し、それを世界のスタンダードにしようと目論んでいる。その本質は、武力・軍事による戦争よりも恐ろしい。

(福島 香織:ジャーナリスト)

 7月に入って、日本人を含めた外国人が留意しなければならない中国の新ルールが発効したので、注意喚起したい。

 まず国家安全機関行政執法程序規定と国家安全機関弁理刑事案件程序規定だ。2つ合わせて新国安二規定、と呼ばれている。ルールの中身は4月に明らかにされていたが、7月1日から正式発効となった。

 行政執法程序は国家のインテリジェンス機関である国家安全部としては初めて対外公布されたルールで、全7章140条。国家安全部門がこれまで秘匿していた法律を武器として戦う法治戦線建設の重要な一歩、と位置付けられている。弁理刑事案件程序規定は刑事処分にあたる国家安全を脅かす事件についてのルールをまとめたもので全11章360条からなる。

 この2つの新規定で非常に注目された内容は被疑者(対象者)のスマートフォンやパソコンなど電子ツールを即時に現場で押収して検査できるようになったことだ。現場で検査ができない場合は対象者を国家安全機関の指定する場所まで連行して押収、検査できるようになる。

 さらに、検査後、国家安全危機が拡散されないように電子ツールの使用停止を命令することもできるようになった。この要求を対象者が拒否すると、その電子ツールやプログラムを返却されないことも明記されている。

 特筆すべきは、国家安全当局が微信などのSNSの公式アカウントで、この新規定を広く公布したことだ。