- あなたの仕事がうまく回らないのは、職場に巣食う「害虫」のせいである――。全体最適のマネジメント理論TOC(Theory of Constraints=制約理論)の第一人者、岸良裕司氏(ゴールドラット・ジャパンCEO)が、会社を停滞させる構造的な問題を害虫に見立て、その特徴と対処の仕方を、実例を基に伝授する。
- 第19回は、学業優秀だった社員にとりつく「ヨイコノノロイ虫」。「良い子の呪い」をかけられた社員は、正解を見つけるのは得意だが、正解のない問いにはめっぽう弱い。
- 変化が激しく、これまでの常識が通用しない時代、過去の事例に頼って正解を探すだけではイノベーションは起こせない。「正解は創るもの」という発想の転換が必要だ。(JBpress)
(岸良裕司:ゴールドラット・ジャパンCEO)
名称:ヨイコノノロイ虫
職場へのダメージ:★☆☆☆☆
主な生息地: 子どものころから成績優秀で、人がうらやむような良い学校を出て、良い会社に入った新社会人に寄生して会社に侵入する。胸に教科書のような突起があるので発見は容易である。
特徴:正解を見つけ、褒められるのが大好きになる「良い子の呪い」をかける。この呪いをかけられると、「正解」のある学校では目立つ存在になるが、「正解」のない社会では成果を出せない。正解探しのクセが治らなければ、検索エンジンにさえ劣るパフォーマンスしか発揮できず、せっかくの頭脳が生かされない悲劇に見舞われるので早期対策が必要である。
正解のある学校から、正解のない社会に戸惑う新社会人
「学校では成績優秀だったのに、仕事ではなぜ結果を出せないんだろう?」
そんな悩みを持っているあなたには「ヨイコノノロイ虫」がとりついている可能性がある。「ヨイコノノロイ虫」は、「いい成績をとって褒められたい」という人の気持ちにつけ込み、成績優秀な生徒に子どものころから寄生し、「良い子の呪い」をかける。
ヨイコノノロイ虫に寄生されると、勉強が大好きになり、教科書から正解を学び、成績がどんどん伸びる。すると「よい子」だと周囲からほめられ、さらに勉強が好きになり、成績が上がり続ける。このため、ヨイコノノロイ虫は今までは益虫として珍重されてきた。
だが、ここに大きな落とし穴があることが昨今明らかになってきた。学校を卒業し、社会人になると、変化が激しく、競争の厳しい世の中にさらされる。そこは、昨日までの正解が、今日は不正解になる世界。正解を探し続けてきたよい子たちは、途方に暮れることになる。