胡友平さんの死を「利用」しようとする当局
私は常々、中国のネットやSNSを見ているが、ここ一週間で胡さんについて、尋常でない数のコメントが寄せられた。
<平凡な英雄の一路平安、天界にはあなたの場所がある>
<まさに敬うべき善行! 天界にまた一人、天使が入った>
この事件で犠牲になった胡友平さんには、心からの哀悼の意を表したい。その上で、私がいま注視しているのは、中国側の「二つの動き」である。
一つは、胡友平さんの「英雄性」を強調することで、中国人の愛国心を鼓舞しようとするものだ。これは、2019年の年末、中国湖北省武漢市で、初めて新型コロナウイルスに対する警告を発し、その後自らも感染して、2020年2月6日に死去した医師・李文亮氏(享年34)に対して取った措置を髣髴(ほうふつ)させる動きと言える。
当時の湖北省人民政府は、死後2カ月近く経った4月2日に、李文亮氏を「烈士」と称えた。この頃、突然全市をロックダウンされた900万武漢市民、及び14億中国人は、当局に対して憤懣やるかたない気持ちだった。それを当局は、李氏を「愛国烈士」に祀り上げることで、人々の怒りの矛先を、当局からコロナウイルスへと転化させようとしたのだ。