ギリシャ債務危機と違うワケ
10年近く続いたギリシャ債務危機の際には、EUに対するギリシャ政府の反逆は最終的に、ギリシャをユーロから追放する脅しによって封じ込められた。
ユーロ離脱を強いられれば、ギリシャの貯蓄の価値が破壊されていただろう。
だが、フランスをユーロやEUそのものから追放することは事実上、考えられない。1950年代以来、欧州統合プロジェクト全体が仏独のカップルを軸として築き上げられたからだ。
それよりはむしろ、フランスがEUと単一通貨内にとどまるが、壊し屋の役割を果たす公算の方がずっと大きい。
そうなれば、ロシアからの脅威に直面してEUが団結することに苦労している時に、欧州の結束と安定が崩れる。
マクロンは辞任しない限り(その見込みは薄い)、今後も国際的なサミットとEUの会議でフランス代表を務め続ける。
だが、選挙の土壇場になって世論調査で大きな振れが生じない限り、選挙後に権威が著しく低下した人物になっているだろう。
欧州諸国の同僚の一部はひそかに、「ユピテル(ジュピター)」(ローマ神話の最高神)とも称されるマクロンの鼻がへし折られる光景を楽しむかもしれない。
だが、権威が低下し、怒れるフランスが欧州に与える全体的な影響は厳しいものになる。