だんなさんが育児担当、初めての子育ての始まり

──三輪先生のご家庭は、だんなさんが育児なさっているところが特徴的ですよね。その様子が、今回の本の中でもたくさん描かれています。

三輪:里親になることを具体的に話し合ったとき、夫が仕事を辞める決心をしたんです。もちろん、共働きでも里親をしている方々もいらっしゃいますが、我が家は仕事が詰まってくると、ふたりとも家のことをおろそかにしてしまうんですね。どんどん散らかっていっちゃって、食事もスーパーのお惣菜が増えていって……。

 これで子育てもするっていうのは難しいよね、どちらかがある程度専念できたほうがいいね、という理由でこうなりました。


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──実際に初めての育児が始まってみて、どうでしたか?

三輪:くうちゃんがとてもかわいくて、ずっとおしゃべりしているので、家の中がとても賑やかになりました。旅行に行ったときなどは、本人がすごくワクワクして楽しんでくれるので、私たちも2倍楽しんでいます。

──大変なことや、困ったことはありましたか?

三輪:一般的に、子どもは里親さんの家に来た直後は、とてもいい子にしているといわれてます。里親もそうですよね。少し外向きの姿を見せているわけです。くうちゃんも、夜は9時になると眠って朝もちゃんと起き、初めはとても手のかからない子でした。

 ところが、10日くらいたったあたりから、夜になるにつれてハイテンションになっちゃって。ベッドの上で飛び跳ねたり大声でおしゃべりをしたり……。寝かせるのにすごく苦労をしたのを覚えています。

──くうちゃんは小学生ですが、学校やまわりの保護者にはどのような説明をしているのでしょうか。

三輪:最初の保護者会で時間をいただいて、夫が里親について説明したようです。今も温かく見守っていただいているという感じはしています。ただ、まわりの保護者に伝えるときに、ただ里親と言っても正しく理解してもらえないことが多いので、どうやったら簡潔にわかりやすく伝えられるのか、ということにはいつも悩んでいます。

 頭の中で何度もシミュレーションするんですけど、結局それってどういうこと?ということが多くて……。ちょっとした挨拶程度のときには、養子縁組と間違われそうなので、言わなかったりすることもあります。

──それで、今回の本を作ろうと思われたわけですね。

三輪:もっとたくさんの人に里親家庭のことを知ってほしい、という思いがありました。いろいろな経験を経て、里親家庭で暮らしている多くの子どもたちが「自分は普通ではない」と思っている、ということを知ったんです。

 子どもたちは、お友だちに隠したり、隠すための嘘をついたりするんですね。でも一方で、そうすることに後ろめたさを感じていたり、本当のことを言えなくてつらそうだったり……。そういうシーンを何度も見てきて、もっとたくさんの人に里親家庭のことを知ってもらえたら、世の中にも自然に受け止めてもらえるのでは、と思いました。