「品質がすべてに優先」を株主が甘受

 ここで絶対的に重要なのは、品質がすべてに優先する方針を株主が甘受していることだ。

 鉄道会社の年次報告書の表紙には安全、顧客満足、従業員の幸福、地域の発展といった優先事項がリストアップされている。

 一方、株主のことは触れられていない。

 民営化された東京メトロにとって問題なのは、前回の大手鉄道会社の民営化(2016年のJR九州)以降に大きな変化が生じたことだ。

 東京証券取引所は上場企業に対し、資本効率と株主への利益還元にかつてなかったほど注力するよう促している。政府の政策も、企業がもっと投資家に友好的になるよう働きかけている。

 アクティビストはますます大きな企業を標的にするようになり、ほんの数年前にはとても考えられなかった要求を突き付けてくる。

 岸田文雄首相は先日、多数のグローバル投資家に向けて日本は今や「資産運用立国」だと宣言し、家計部門に眠る巨額の資産が公開市場に誘導されるようになっている。