長期化した対テロ戦争では米軍はイラクとアフガニスタンでゲリラ戦を強いられ苦戦した。ラファでも同じ失敗が懸念されている。
そもそもハマスに対する「全面的勝利など可能だとは思えない」(カート・キャンベル米国務副長官)ことをイスラエル首相は認識していないようだ。
ハマス幹部で死亡したのは副司令官だけか
イスラエルは対ガザ攻撃の開始に当たって、ハマスの壊滅と、全長500キロものトンネルの破壊、それに加えてハマスのガザ地区トップ3人の「捕獲か殺害」を目標に掲げた。
3人とは、昨年10月のイスラエル急襲の首謀者であるガザ地区最高指導者ヤヒヤ・シンワル氏、軍司令官モハメド・ダイフ氏、副司令官マルワン・イッサ氏。このうちイッサ氏だけが、今年3月にイスラエル軍がガザ中部のヌセイラト難民収容所の地下トンネルを攻撃した際、死亡した。
この米ホワイトハウスの発表が正しいとすれば、イッサ氏は標的として狙われ銃撃されたわけではない。イスラエルによる暗殺工作はまだ本格的に実行されていないようだ。
シンワル氏はどこにいる?
暗殺工作に絡んで最も注目されるのは、最高指導者シンワル氏の動向だ。
イスラエルと米国の情報機関が彼の動きを綿密に探っている事実がこのほど、図らずも明るみに出た。先の停戦交渉にシンワル氏は、イスラエルの国際的名誉がズタズタにされ、同盟国である米国との関係にダメージを受けるほどに戦争を長期化させる、という戦略で臨んだという。恐らく、ハマスの交渉代表の口ぶりから、シンワル氏がそのような指示を与えていた、と判断したのだろう。
『ニューヨーク・タイムズ』はそんな情報をイスラエルと米国のインテリジェンス担当官から得た、と伝えている。
交渉現場とシンワル氏の間の連絡は「シンワル氏に伝えるのに1日、彼の回答を受け取るのに1日かかる」ことがあった、と米国筋とハマス筋が同紙に明らかにしたという。
では、シンワル氏はどこに滞在しているのか。「人質を人間の盾に使うため、人質の近くに潜伏している」とか、「昨年11月の一時休戦の際に解放された人質がシンワル氏を見たと証言した」、あるいは「今年2月にイスラエル兵がトンネル内で発見した監視カメラに、シンワル氏が家族とトンネルに逃げ込む動画が残されていた」といった情報が取りざたされている。
◎新潮社フォーサイトの関連記事
・中止も再開も国民には一切知らされない「汚物風船」
・東京都知事選で永田町も風雲急 “蓮舫ショック”で追い詰められる岸田総理
・ロシア国防省“大粛清”の背後に「プリゴジン名誉回復」