原油生産枠をめぐりOPECでUAEとサウジアラビアが対立も(写真:Evolf/Shutterstock)
  • 石油輸出国機構(OPEC)は6月2日に半年に1度の閣僚級会合を開く。OPECプラスは自主減産を実施中で、7月以降も継続されるとの見方が一般的だ。
  • そうした中、アラブ首長国連邦(UAE)は原油生産枠の拡大を要求しているとされ、減産により価格を維持したいサウジアラビアなどとの対立が懸念される。
  • 産油国の中でも経済の原油依存度が低いUAEは価格維持よりも増産による量の拡大を望んでおり、OPECから脱退するようなことになれば原油急落の可能性がある。(JBpress)

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 5月29日の米WTI原油先物価格(原油価格)は前日比0.60ドル(0.8%)安の1バレル=79.23ドルで取引を終了した。「欧州中央銀行(ECB)が6月に利下げする」との期待から、原油価格は一時、1バレル=80ドル台まで上昇していた。原油市場はこのところ、米欧の中央銀行の利下げ報道に敏感に反応するようになっている。

 まず、いつものように世界の原油市場の需給を巡る動きをアップデートしておこう。

 イランのメディアは26日、「モフベル大統領代行率いる経済会議は国内の原油生産量を日量360万バレルから400万バレルに増加する計画を承認した」と報じた。イラン石油省も29日、「46億ドル規模の開発投資をまもなく開始する」ことを明らかにしている。

 イランはOPEC加盟国だが、減産の取り組みには参加していない。疲弊した経済を立て直すために原油収入を拡大することが狙いだろうが、減産を実施しているOPEC加盟国に対するさらなるしわ寄せになることは確実だ。

 欧米では石油メジャーに対する「脱炭素」の圧力が弱まっている*1

*1石油メジャー、弱まる脱炭素の外圧 化石燃料に再評価(5月23日付、日本経済新聞)

 ウクライナ危機で原油をはじめとする化石燃料の重要性が再認識されており、過少投資の懸念が徐々に和らいでいくことになるだろう。

 一方、需要面では、ゴールドマン・サックスが27日、「世界の原油需要は2034年まで増加する」との楽観的な予測を示した。だが、中国から気になる情報が出ている。