必要なことは「強要」ではなく「連携」

 マルケ氏が提唱する「言い方」の極意を、さらに詳しく見ていこう。

 本書において思わず「なるほど」と膝を打ちたくなったのは、「誰もが異論を言いやすい環境を作るためには——チームに眠るアイデアを可視化する方法」と題された第4章にある。「異論」というワードを目にすると「なんだか面倒くさいことになりそう」と感じがちだが、マルケ氏の考え方は違う。

 マルケ氏が提示した例は、会議の席で上司からよく聞かれる「私の意見はこうだ。みんなそれでいいか?」というフレーズ。自分が望む答えへの誘導や強引な合意を求めるのは、「連携」ではなく「強要」だとマルケ氏は警鐘を鳴らす。この場合は合意を求めるのではなく、たった一言「みんなはどう思う?」と尋ねるだけで“選択肢”が広がるのだ。

少数派が意見しやすい環境を整える

 会議を有益なものにするために参考になりそうなマルケ氏の言葉は、ほかにもある。会議を始める際の問いかけとして、一例を見てみよう。

「みなさんがやるべきだと私が思うことを伝える前に、私がここにいなかったら、みなさんは何をするか教えてください」

 部下からすれば上司の存在は大きく、ともすれば萎縮しがちになる。しかし上司がいったん「いないもの」となり、さらに発言を促されれば、状況が変わる。

 続いては、会議で投票がおこなわれ、多数派と少数派に分かれたシチュエーション。マルケ氏いわく、少数派が極端に少ないと意見を言えなくなる恐れがあるという。豊富な意見を集めるためには少数派の意見や情報に関心を示し、「安心して話せる環境」を整えるべくチーム全体に向かって、こう尋ねるという。

「こういう票が入った背景には何があると考えられる?」

「この票を入れた人に見えていて、ほかの人に見えていないことは何だろう?」