バブル全盛だった1990年、ジェームス・ダグラスがマイク・タイソン(ともに米国)との統一世界ヘビー級タイトルマッチで「世紀の番狂わせ」を演じて以来、34年ぶりとなった東京ドームでのボクシング興行。「Prime Video Presents Live Boxing8」と銘打たれた5月6日、スーパーバンタム級の4団体統一王者、“モンスター”井上尚弥(大橋ジム所属)がメインマッチのリングに立った。
元世界2階級制覇王者でWBC世界同級1位の“悪童”ルイス・ネリ(メキシコ)との対戦は鮮やかなTKO勝ち。自身4階級目となる同級でもこれで全3勝と無双状態だ。
井上は今年中にあと2試合、この階級で戦う構想を、世界で最も権威あるボクシングの米専門誌「ザ・リング」のインタビューで明かしている。日本が生んだモンスターのファイトマネーは高騰の一途。今後の戦いの舞台には、潤沢な“オイルマネー”を持つサウジアラビアも候補として浮上する。
(田中 充:尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授)
ドームの野球なら二塁ベース付近に設けられたリングを取り囲むように、4万人を超える大観衆が歴史的な一戦を見守った。
井上は、1回にキャリア初となるダウンを奪われる大波乱の幕開けにも動じなかった。
「やっぱりボクサーということで、そういうシーンというのは自分自身燃え上がるところがあった」(井上)
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2回にダウンを奪い返すと、次第に主導権を握る。5回に左フックで2度目のダウンを奪うと、TKOのシーンは6回だった。
連打で攻勢に出ると、最後は右ストレートを浴びせて、ネリから3度目のダウンを奪って決着をつけた。地鳴りのような大歓声に称えられた井上は勝利インタビューで「1ラウンド目のサプライズ、たまにはいかがでしょうか」と笑い飛ばし、「また、皆さんが期待する最高の試合をしたい」と胸を張った。