おはなはん通り 写真/フォトライブラリー

(小林偉:放送作家・大学教授)

当初は主演は男女を交互に起用していた?

 放送中のNHKの朝ドラ『虎に翼』の勢いが止まりません。

 ヒロインの伊藤沙莉をはじめ、兄の直道役の上川周作や、その嫁=花江役の森田望智などなどが人気を集め、開始3週目にして視聴率が最高記録を更新するなど、ネットでは連日、絶賛するレビューが展開されています。

 さて筆者は、この『虎に翼』スタートに先立って放送された『夜だけど朝ドラ名場面スペシャル』という番組の構成を担当させていただきました。そこで今回は、番組制作の過程でリサーチした資料を基に、放送開始から63年を経ても支持され続けている“朝ドラ”を掘り下げてみようと思います。

 “朝ドラ”こと、NHK連続テレビ小説がスタートしたのは、1961(昭和36)年4月3日。当時は翌年3月末までの1年間放送されていました。その記念すべき第1作は『娘と私』という作品。原作は獅子文六、主演は劇団現代座の創立者である舞台俳優=北沢彪です。

 以降、第2作『あしたの風』(原作・壷井栄、主演・渡辺富美子)、第3作『あかつき』(原作・武者小路実篤、主演・佐分利信)。ちなみに、ここまでの3作の脚本は全て、山下与志一という方が担当されています。続く第4作は『うず潮』(原作・林芙美子、主演・林美智子)、第5作は『たまゆら』(原作・川端康成、主演・笠智衆)という具合に制作されていきました。

 こうして振り返ってみると、初期は文豪と呼ぶに相応しい方々の原作ばかり。やはり“連続テレビ小説”という枠だけに、有名小説家の作品を映像化するという趣旨だったようですね。

 この頃までの作品は映像が僅かしか現存しておらず(当時はビデオテープが非常に高額で、放送された作品のテープを上書きして使用されていたそう)、今ではごく一部しか視聴できないのですが、それを観る限り、主人公の俳優による独白ナレーションが多用されていたりと、“テレビ小説”感をとても強く感じましたね。

 また、主演俳優に男女を交互に起用しているのも特徴。現在では女性主人公(ヒロイン)による一代記が主流というイメージが定着している“朝ドラ”ですが、当初はそういうコンセプトではなかったようです。

 そんな“NHK連続テレビ小説”の流れを変え、現代に至る“朝ドラ”像を確立したと言われるのが、1966(昭和41)年4月スタートの第6作『おはなはん』(主演・樫山文枝)です。この作品が作り出したのが、以後定番化する6つの法則。早速ご説明していきましょう。