ロビー・ロバートソン(1988年) 写真/Lynn Goldsmith/アフロ

(小林偉:大学教授・放送作家)

世界中から悲しい知らせが次々と・・・

 近年、悲しむべきは時代を彩った様々なアーティストの相次ぐ訃報です。ここ数か月に限っても、日本を代表するアーティストだった坂本龍一、“ミスターAOR”とも呼ばれたボビー・コールドウェル、『WE ARE THE WORLD』の提唱者であるハリー・ベラフォンテ、その『WE ARE THE WORLD』にも参加していたティナ・ターナー、さらにジョージ・ウィンストンやジェーン・バーキン、トニー・ベネットなどなど、世界中から悲しい知らせが次々と・・・。致し方ない時の流れということなのでしょうが、音楽ファンの一人としてはやはり、やり切れない思いを抱かざるを得ません。

 そんな中の8月9日、またしても悲報が届きました。ロビー・ロバートソンの死。1960年代から70年代にかけて大活躍した、ザ・バンドのギタリストかつ、メイン・ソングライターであった、ロック界の最重要人物の一人と言っても過言ではないアーティストです。

 1977年のザ・バンド解散後(後にロビー抜きで再結成)は、『カーニー』『レイジング・ブル』『キング・オブ・コメディー』『ハスラー2』など映画音楽の仕事を中心にこなしていましたが、1987年に満を持してソロデビュー。以来、2019年までに6枚のソロアルバムを発表してきました。その後、程なくして闘病生活に入り、残念ながら帰らぬ人になってしまったのです。

 そのロビー・ロバートソンの最後の雄姿が観られるのが、「PLAYNG FOR CHANGE」というチャリティー・プロジェクト。これは国境も人種も宗教も越え、音楽のチカラで世界に活気や繋がり、平和をもたらすことを目的に、アメリカ人の音楽プロデューサー/エンジニアであるマーク・ジョンソンが2004年に創設したものです。

 このプロジェクトの目玉が「SONGS AROUND THE WORLD」というシリーズ。その趣旨に賛同する世界各国のアーティストたちが、それぞれの国からそれぞれの歌声や楽器で参加し、ある楽曲をカバーするというものです。持ち寄られた演奏と映像を巧みな編集技術で仕上げた、いわばコロナ下で多く観られたようなリモート収録モノですが、その先駆けとなっていたというのも特筆すべき点かもしれませんね。

 さて、ロビー・ロバートソンに話を戻しましょう。彼がこのプロジェクトに参加したのは、ザ・バンド時代に彼が作詞・作曲した名曲「THE WEIGHT」のカバー。

 冒頭からリンゴ・スターが登場し、スマホ片手に「どのキーだい? ロビー」と尋ねるシーンからスタートし、ロビーのギターによるイントロ、そしてアメリカの人気ブルースマンであるマーカス・キングのヴォーカルへ・・・。以下、アメリカの人気姉妹デュオ、ラーキン・ポーの他、コンゴ、イタリア、バーレーン、ウルグアイなどのアーティトが次々と登場。その中には日本が誇るギタリストCHARやピアニストの小牧恵子などの姿も。ロビーは途中、短いながらもギターソロを聴かせ、最後には満面の笑顔も覗かせているのが印象的です。

 この収録は2019年秋頃のよう(リリースは2020年)ですので、恐らくロビーにとっては生前最後の雄姿ということになるのでしょう。

 ちなみに、この「SONGS AROUND THE WORLD」のシリーズには、この他にも素晴らしい演奏が目白押しです。