AIの台頭でなくなるかもしれない仕事として挙げられるコピーライター。BMW、KDDI、富士フイルムなどを担当し、40年にわたりコピーライターとして活動してきた中村ブラウン氏が初めてChatGPTを使ってみた感想は「ふざけるなよ!」という憤りだった。
広告・宣伝、特にコピーライティングを考えるときに最も重要かつ時間と労力をかける「ターゲット分析」を、ChatGPTがものの数分で的確に行ったことへのショックもあった。だが、使いこなすにつれて「まだChatGPTができていない点」にも気づかされたという。ChatGPTがたどり着けない「人の心を動かす」コピーワークを生み出す手法とは何か。(JBpress編集部)
※この記事は、中村ブラウン氏の『ChatGPT 売れる文章術』(三笠書房)を一部抜粋・編集したものです。
コピーに使えるカスタマーレビュー
(中村ブラウン:広告クリエイター)
ターゲットの心を動かす際に最も重要なことは、「共感させる」ことにあります。違う言葉で言えば、「まるで、自分のことを言われているよう」と感じさせることでもあります。
たとえば、マーベル映画に出てくるヒーローは、一般人とは桁外れに異なっています。でも、ヒーロー物語でも視聴者を巻き込むために、「共感させる」ことが重要になります。そこで、彼ら製作者は、そのヒーローに「人間臭い弱み」をあえて持たせています。
スパイダーマンなら「家族を殺された悲しみや高校生らしい心の葛藤」、キャプテンアメリカなら「冬眠している間に時代に取り残されてしまった葛藤」といったように、鋼の肉体は持っていてもメンタルは人間らしい弱さを持っています。だからこそ、見る者は彼らに「共感」を覚えることができる。
少し話が脱線してしまいましたが、「共感」はコピーライティングにおいても外せないポイントです。
【カスタマーレビュー】
例:「最近、テレビの音がうるさいと、家族から注意された」
アマゾンなどのネット通販で買い物をする際に、カスタマーレビューを参考にされた方は多いと思います。カスタマーレビューは広告文章と違って、悪いことも正直に書かれているし、何より使っている人の生の声は、自分が購入した後にどのような感想を持つのかが疑似体験できます。
キャッチコピーの例は、某補聴器メーカーに寄せられたカスタマーレビューからの引用です。つまり、シニアの方は耳が聞こえにくくなり、知らず知らずのうちにテレビの音量を上げてしまう。それをご子息などに注意されたという構図です。
目に浮かぶような日常のシーンであり、この後、ボディコピーなどで補聴器のニーズを説明していくには効果的なキャッチコピーですね。