バイデン大統領が払わされる代償

 バイデン氏は国内でも政治的な代償を払っており、若い有権者の間で支持を落としている。

 同氏のチームは、米国の民主主義そのものが次の選挙にかかっていると本気で考えているため、これは取るに足りない検討事項でもなければ無視できる問題でもない。

 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相がドナルド・トランプ前米大統領と親しいこと――またイスラエル自体の民主主義を損なっていると非難されていること――は、イスラエル政府に対するホワイトハウスの疑念を一段と強める。

 それにもかかわらず、資産の側では、イスラエルは今も米国の古い同盟国であり、中東で最も開かれた社会だ。

 イスラム主義のテロリズムに対する共通の懸念に基づき、イスラエルと西側諸国の情報機関の間には緊密な協力関係もある。

 また、バイデン政権はイスラエルの終末論的な対イラン観を共有していないものの、同国を極めて危険な国と見なしている。

 ワシントンでは、イランはロシア、中国、北朝鮮とともに「敵の枢軸」を構成する4カ国のうちの1つとして描き出されている。

 イランがイスラエルに対して優位に立ったと主張することができれば、この枢軸は強さと自信を手に入れる。

米国には判断力と運が必要

 ヨルダンが今回、イランから発射された大量のミサイルを迎撃することに協力したと伝えられていることは、中東にさえ、イスラエルに対するイランの攻撃を阻止する米国の決意を共有する国が存在することを物語っている。

 もしかしたら、ホワイトハウスにはこうした対立する目標を均衡させられるゲーム理論の達人がいるのかもしれない。

 もしいなかったら、新たな戦争に引きずり込まれずにこの危機を切り抜けるためには、米国には判断力だけでなく運が必要になる。

By Gideon Rachman
 
© The Financial Times Limited 2024. All Rights Reserved. Please do not cut and
paste FT articles and redistribute by email or post to the web.