イスラエルは「胴元のカネで博打」

 ジョー・バイデン大統領が米国はイランに対するいかなる反撃にも参加しないと強調したこともあり、イスラエル政府はすぐには対抗措置に出ないことにした。

 だが、イスラエルは時期が来れば反撃することを誓った。

 イスラエル側は、もしイランが米国に向けて何百発ものミサイルを発射したら、米国は間違いなく対抗するはずだと指摘する。

 だが、イスラエルは米国の軍事支援と米政府からの暗黙の安全の保証に依存している。

 この危機が始まった頃にある米政府高官が筆者に語ったように、「イスラエルは胴元のカネで博打をしている」わけだ。

 この数週間、バイデン氏は米国が支援にどのような条件をつけるか、あるいはイスラエルへの武器供給を制限するか否かに言及することなく、パレスチナ自治区ガザでのイスラエルの行動を公然と批判するようになった。

 イランにどう対応すべきかという問題は、米政府とイスラエル政府の意見対立に新たな層を加えることになる。

イランの脅威の認識に差

 イスラエルの政府高官らは長年、イランと同国の核開発計画はユダヤ国家イスラエルに対する存亡にかかわる脅威だと主張してきた。

 イスラエルか米国がイランの核施設を爆撃することが断続的に話題になった。イランは今、かつてないほど核兵器開発に近づいており、イスラエルが抱く脅威の認識はハマスの攻撃によって劇的に強まった。

 イスラエルの新たな常識は、脅威を破壊するために国が先制的な行動を取らなければならない、というものだ。

 イスラエルでは大抵、イランの体制は喜んでアルマゲドンのリスクを冒す狂信的な宗教カルトとして描かれる。

 だが、米国はイランの政権を「サバイバー体制」と見なし、残虐だが理性的な組織だと考えている。

 バイデン政権は、イランは確かに今回のミサイル攻撃で重大な一線を越えたと認識している。だが、今はイラン側が事態を沈静化させたいというシグナルを送っていると考えている。