腐敗指数が高いエジプト
ドイツにある腐敗(特に汚職)問題に取り組む国際NGO「トランスペアレンシー・インターナショナル」が1995年から毎年発表している「腐敗認識指数(The Corruption Perception Index)」の2018年版では、エジプトは世界180カ国中105位(ランキングが低いほど腐敗がひどい)。ブラジル、コートジボワール、エルサルバドル、東ティモール、ザンビア等と同順位である。
1位(最も汚職が少ない)はデンマーク、日本は18位、フランスは21位、米国は22位、中国は87位である。36~38位には、筆者が金融マン時代に汚職を見聞きしたスロベニア、キプロス、リトアニアなどが並んでいるので、ごく大雑把に言って、大学の証書がそのまま信じられるのは30位くらいまでではないだろうか。
“不正卒業証書”を持っていても、学位として認められないのは当然である。
学位とは何かということに関し、以前JBpressで東大の伊東乾准教授が「村上春樹の無自覚な不正学位取得会見が示す病根」という記事で分かりやすく述べている。村上氏が母校の早稲田大学での記者会見で「当時の話ですが、フランス文学に安堂信也さんという、翻訳でも有名な方がいまして、彼のラシーヌ(17世紀の劇作家)の講義を取っていました」「授業には出ませんでしたが、出ないと卒業できない。授業に出られない事情を説明したら、『じゃあ、君の店に一度行ってみよう』ということで、(ジャズ喫茶のあった)東京の国分寺に来てくれた」「で、店を見て、『君もいろいろ大変だなあ』って、スッと単位をくれた。いい人でしたね。ラシーヌなんて、1行も読んだことなかったけど」と話した。
その内容に対して伊東氏は、「これは単位の不正取得そのもので、安堂信也教授は、現在であれば何らかの処分を免れません。不正に取得した単位で卒業したと称している本人の卒業証書は当然返納、卒業資格は剥奪が妥当な内容でしょう」「例えば、米ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学、英ケンブリッジ大学で、自分が取得した単位や卒論が、本来の水準に達していないのに、教員が不正に合格させた事実を大学当局同席の場で公表したら、どういうことになるでしょう? 不正採点を行った教員は、当然責任を問われ、また取得した不正単位は剥奪、卒業証書は返還し、卒業資格停止が妥当な判断に一点の疑いもありません」と指摘している。
(参考記事)村上春樹の無自覚な不正学位取得会見が示す病根
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54648
エジプトの国立大学の“不正卒業証書”は、村上春樹氏のケースどころではない不正である。あらためて繰り返すが、不正卒業証書を持っていたからといって、学位としては認められない。これは当然のことである。
(続く)