- 英王室キャサリン妃が自身のがんを告白した。
- それまでメディアやSNSでは同妃への誹謗中傷が吹き荒れており、その悪辣さは度を超していた。
- 英国ではかつて、パパラッチなどによる苛烈な報道合戦でダイアナ妃を死に追いやってしまった悲劇が起きている。その教訓はどこに行ったのか。(JBpress)
(楠 佳那子:フリー・テレビディレクター)
英王室キャサリン妃が動画で自身のがんを告白した3月22日(現地時間)、いち早く反応を示した一人がスナク英首相だ。キャサリン妃によるX(旧Twitter)での動画投稿は英国時間午後5時59分、これに対し首相の投稿は午後6時3分となっている。
ウィリアム皇太子や同妃と3人の子どもたちなど、王室関係者へのお見舞いの言葉が簡潔につづられたのち、こう記されている。
「この数週間というもの、(キャサリン妃)は激しい追及にさらされ、世界中の一部メディアやソーシャルメディアによって不公平な扱いを受けてきた」
The Princess of Wales has the love and support of the whole country. pic.twitter.com/IFX51Wm5Q3
— Rishi Sunak (@RishiSunak) March 22, 2024
予測される今年中の総選挙を前に支持率が低迷し、普段の投稿には厳しい言葉が投げつけられるスナク首相のXだが、キャサリン妃に関するこの声明には「これまででベストな投稿だ!よく言った」「英国の国家元首として適切、要点も論調も正確だ」など、概ね好意的なリプライがついている。
一国の首相が皇太子妃の病状に関連して、公然と、しかも瞬時にメディアとSNSへの痛烈な批判を行ったこと自体が異例とも言える。その言葉が支持された背景は、裏を返せば首相の言葉通り、それだけキャサリン妃に対するメディアとSNSによる不当な誹謗合戦が、このところ苛烈を極めていたことの証でもある。
翌日のニューススタンドには、同じく金曜夜に起きた、モスクワでのテロ攻撃に関するニュースではなく、キャサリン妃ががんを告白する姿を1面トップにした新聞が並んだ。
ことの発端は既報の通り、今年初めにキャサリン妃、そしてチャールズ国王の健康状態に関する発表が相次いだことだ。国王はその後がんの診断を受けたことを公表した。しかしキャサリン妃については腹部の手術で入院したということと、BBCをはじめとする複数のメディアが「がんではない」と報じたこと以外、ほとんど病状に関する情報が出ていなかった。
個人的には、当初この2つの情報だけで推測できたのは、同妃が流産したのではないか、ということだった。腹部の手術でがんでないとするならば、女性特有の病気を想像した。病名を公表できないことについては、女性として流産の痛みを世間に公表したくない気持ちも理解できる上、まして皇太子妃の身では後継者問題にも関わり、つじつまが合わないこともない。
筆者は当然のことながらこうした推論の上に単に考察を巡らせていただけである。しかし今回は、英王室でも最も注目度の高い一人の同妃だけに、臆測の域で何かを世の中に発信したいと感じた人たちが、うんざりするほど多数存在したことが明白であった。