欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は3月4日、米アップルが競合音楽配信サービスとの競争を阻害したとして、同社に約18億ユーロ(約2900億円)の制裁金を科した。アップルはこの決定を受け不服申し立ての手続きを行う考えを示している。
ベステアー氏「アップルは10年間EU競争法に違反」
欧州委で競争政策を担当するマルグレーテ・ベステアー上級副委員長はアップルの慣行について、「開発者が、アップルのエコシステム(経済圏)外で利用できる安価な代替音楽サービスについて、消費者に情報を提供することを制限してきた」と指摘した。同氏は、「この慣行は過去10年続いており、アップルはその間、EU競争法(日本の独占禁止法に相当)に違反していた」とも説明した。
欧州委は、アップルが自社アプリストア「App Store」内で音楽配信事業者に義務付けている独自規約について調査してきた。スウェーデンの音楽配信大手スポティファイ・テクノロジーの苦情を受けて2020年に調査を開始した。これに先立つ23年2月、欧州委はEU競争法違反の疑いがあると警告する「異議告知書」をアップルに送付していた。英フィナンシャル・タイムズ(FT)は24年2月、欧州委がアップルに制裁金を科す方針を固めたと報じていた。
欧州委は今回、「アップルの行為により、ユーザーは音楽配信サービスに対して、著しく高い料金を支払うことになった」と結論付けた。アップルは、同社のアプリストア「App Store」において、有料アプリやデジタルコンテンツを販売するアプリに対し最大30%の販売手数料を課している。欧州委は、そのコストがより高額なサブスクリプション料金という形で消費者に転嫁されたと指摘した。また、欧州委は今回の決定の一環として、アップルに対して、同社のオペレーティングシステム(OS)以外でサービスを提供するアプリを遮断することを禁止した。