主人公がかなりヤバい?歌詞
●JESSIE’S GIRL/RICK SPRINGFIELD
オーストラリア出身のミュージシャンで、1972年に世界的な成功を夢見て渡米したものの、鳴かず飛ばずの日々。ルックスの良さから俳優業などもこなしていたリック・スプリングフィールドが、1981年にようやく放った大ヒット曲「ジェシーズ・ガール」。全米ヒットチャート1位に輝き、この曲でグラミー賞最優秀男性ロックヴォーカル賞も受賞しています。
ですが、この曲で歌われている主人公はかなりヤバい人物です。歌詞を訳してみると・・・
「ジェシーは俺の親友。彼は最近ちょっと変。そう、ジェシーには彼女が出来たんだ。で、俺が今モノにしたいと思っているのが、そのジェシーの彼女なんだ」「ヤツはあのカラダで彼女を抱いてるんだ。そんなことは分かり切っているけれど。アア、どうしたらいいんだろう。どうやったら手に入るんだろう」「俺はジェシーの彼女をモノにしたい。ジェシーの彼女が欲しいんだ」
・・・ヤバくないですか? いわば親友の彼女強奪宣言ですよ! この内容が大ヒットするっていうのは、アメリカの弱肉強食社会ならではなんでしょうか?
●SUPERSTAR/CARPENTERS
去年、23年ぶりにソロアルバムをリリースして話題となった、リチャード・カーペンター。かつて彼が、実妹である故カレン・カーペンターと結成していたカーペンターズは、不滅の輝きを持ったポップグループだったのは説明するまでもないでしょう。
そんなカーペンターズが1971年に全米チャート2位まで上がる大ヒットを記録した曲がこの「スーパースター」。
しっとりとした曲調と、透明感溢れる清楚で美しいカレンの歌声は素晴らしいの一言ですが、歌詞の内容はそれに反して、否、だからこそ、ちょっと怖いです。
訳してみましょう。「遥か昔、遠い場所で私たちは愛し合ったわね、2度目のショウの前だった。あなたの弾くギターは甘く澄んでいるけど、ここにはいない、ただその音がラジオから流れてくるだけ」「私を愛してるって言ってたじゃない。必ず戻って来るって言ってたじゃない。どうしたらあなたは戻って来てくれるの? あの哀しげなギターを聴かせてくれるの?」「ベイビー、ベイビー、ベイビー・・・心からあなたを愛してる」・・・という、かなり“重~い”女性の独り言という感じの歌詞なんですね。
実はこの曲はカバーでして、オリジナルはデラニー&ボニーという方々で、そちらのタイトルは「グルーピー」。要するに、かつてロックスターと関係を持ったグルーピーが、ラジオでそのスターの曲を聴きながら、恨み言を唱えているという内容なんですね。特にサビの最後の部分で「I LOVE YOU」の後に「I REALLY DO」と気持ち悪いぐらいに念押ししているのは、カレンの真っ直ぐで静謐な歌声と相俟って、不気味ですらありませんか?
●GREEN, GREEN GRASS OF HOME/TOM JONES
イギリス・ウェールズ出身の大御所シンガー、トム・ジョーンズ。“虎の咆哮”の異名をとるほどのダイナミックな歌声で知られています。これまで、映画主題歌だった『何かいいことないか子猫ちゃん』や『007/サンダーボール作戦のテーマ』、他にも『ラブ・ミー・トゥナイト』『デライラ』『恋はメキメキ』などなど、数多くのヒット曲を放ってきました。
そのトムが1966年に全英チャート1位、全米でも11位の大ヒットを記録したのがこちらの曲、邦題は『思い出のグリーングラス』です。
曲調はカントリー・バラードという感じ。その穏やかなメロディに乗って、トムが朗々と歌い上げますが・・・これまた、歌詞は驚きの展開を見せます。
抄訳してみると、1、2番の歌詞は「故郷の街に帰ってきた俺。生まれた家や両親、幼馴染のメアリーたちと再会して、やはり故郷の青い芝生(=Green Grass)はいいなぁ」・・・という、のどかな内容なんですけど・・・これが3番に入って、語り調になってから一変!
「ああ、夢から覚めたら、俺の周りは灰色の壁だ。看守や、悲しい顔をした老牧師の姿も見える。これから彼らと腕を組み歩くことになるんだな。ア~もう一度、故郷の青い芝に触れたいなぁ」・・・と主人公が牢屋の中にいることを示唆した、何だか穏やかじゃない感じになります。
そして極め付きが歌詞の最後のフレーズ・・・「そうだ、俺のことは、あの故郷の青い芝の下に埋めてくれ」
・・・要するに、2番までの歌詞は主人公の夢の中の話で、3番の語りがオチ。
この歌は、死刑囚が最後の朝を迎えたときの心境を歌っている歌なんですねぇ。これが大ヒットとは恐るべし。
歌詞を知ると、響き方が一変する・・・今回は、そんな怖~い歌詞を持つヒット曲のお話でした。