ジャニス・ジョプリン 写真=mptvimages/アフロ

(小林偉:大学教授・放送作家)

洋楽が使用されるCMソング

 随分前から巷間囁かれている、いわゆる“洋楽離れ”現象。事実、現在CDなどの国内ポピュラー音楽売り上げの約88%はJ-POPなどの邦楽で、洋楽は約12%。もはや、洋楽を中心に聴いているだけでマニア扱いされかねないのです。

 その一方で、ストリーミングなどの配信が主流となっている現在の音楽市場では、邦楽・洋楽という従来の垣根は意味がないという指摘もあります。

 その指摘は至極もっともなことではありますが、『ベストヒットUSA』(テレビ朝日系)や『ポッパーズMTV』(TBS系)など、1980年代に多くあった洋楽情報番組は現在、地上波のテレビ番組にはほぼ見当たらず、ラジオからも洋楽を中心にした番組は年々減少。洋楽に関する情報を従来のメディアから等しく無料で得ることは難しくなっています。ネットなどにたくさんの洋楽が溢れていても、それを選択するキッカケすら得られないような状況なのです。

 そんな中、広く一般的に洋楽とタダで触れる機会を設けているのが・・・テレビCM。そこで流されている洋楽曲に耳を傾けてみたら・・・というのが今回のテーマです。

 現在放送中のCM曲の中で、人気を集めている洋楽アーティストの一人が・・・ジャニス・ジョプリンです。

 彼女は1960年代後半のアメリカを代表する女性ロックシンガーですが、1970年10月4日、27歳の若さでこの世を去っています。

 そのジャニスの曲が使われているのが、住友不動産のCMで、曲は「Maybe」。

●Maybe/JANIS JOPLIN

 この曲は、1969年にリリースされた彼女の『コズミック・ブルースを歌う』というアルバムに収録されていたナンバーですが、実はこちらはカバー。オリジナルは、シャンテルズという黒人5人組の女性ドゥーワップグループが1958年に全米チャート15位を記録したヒット曲です。ジャニスの曲の中でも渋めなこの曲を選んでいるところに、CM製作者たちのこだわりが感じられて興味深いですね。

 ジャニスには、もう一つCMで取り上げられている曲があります。それがこちら。

●Cry Baby/JANIS JOPLIN

 この曲が流されているのは、アカデミー賞俳優のナタリー・ポートマンが出演しているディオールのCM。この曲はジャニスの死後にリリースされた『パール』(1971年)に収録されていたもの。ディオールは以前もジャニスがリード・ヴォーカルを務めていたビッグ・ブラザー&ホールディング・カンパニーの『PIECE OF MY HEART』を使用しており、担当者が結構なジャニス好きであることがうかがえます。