韓国最大の鉄鋼メーカー、ポスコの会長選びが難航している(写真はソウルのポスコ本社、写真:ロイター/アフロ)

 韓国最大の鉄鋼メーカーで、大企業グループ5位のポスコホールディングス(以下、ポスコ)の次期会長選びが迷走してきた。

 後継会長選びが大詰めを迎える中で、登記理事(取締役)に対する「豪華視察出張」問題での捜査が始まった。

 そこに浮上した財閥CEO(最高経営責任者)出身者の招聘説。ポスコ会長選出は今回も話題満載だ。

「どうして、いつもスムーズに決まらないのか・・・」

 あるポスコ役員OBがこう嘆く通り、ポスコの会長選出はいつもすんなりと進まない。今回もそうなりつつある。

退任求めるサイン?

 今の崔正友(チェ・ジョンウ=1957年生)会長は2018年に就任した。2021年に再任し、2024年3月に任期満了となる。

 業績や年齢からみれば、6年間会長を務めた後、「続投」も十分可能なはずだが、社内外では「早期退任もありうる」との見方もあった。

 韓国紙デスクはこう話す。

「ポスコは純民間企業だが、これまで政権が代わると会長が交代した。2022年5月に尹錫悦(ユン・ソンニョル=1960年生)政権が発足してからも早期退任を促すサインが出ていた」

 いったい何のことか?

 大統領が企業CEOを集めて開く会議や、財閥総帥やCEOを大勢引き連れて行く外遊メンバーなどから崔正友会長が外されるようになったのだ。

 2023年秋にサウジアラビアのムハンマド皇太子が訪韓して韓国の財閥首脳や大企業CEOと面談した際にも、尹錫悦大統領がUAE(アラブ首長国連邦)を訪問した際にも、「中東と関係が深い」にもかかわらずポスコの会長の名前はなかった。

 こういうことを繰り返すたびに韓国の産業界やメディアの間では「会長交代への圧迫ではないか」という見方が出ていた。

 まさかと思うかもしれないが、2000年にポスコが民営化した後も、歴代の会長は全員が政権交代から1年後あたりで「退任」していたのだ。

 崔正友会長の前任である権五俊(クウォン・オジュン=1950年生)氏は2014年に会長に就任し、2017年に再任を果たした。

 直後に文在寅(ムン・ジェイン=1953年生)政権が誕生すると、その1年後に退任した。

 その前の会長は朴槿恵(パク・クネ=1952年生)政権後、さらにその前の会長は李明博(イ・ミョンパク=1941年生)政権後、いずれも3年という会長任期を全うできずに退任した。