フォーミュラEに参戦している日産のマシン(昨年行われた「ジャパンモビリティショー」の会場にて【写真】©Kento Nara/Cover Images via ZUMA Press/共同通信イメージズ)

 今年、日本で初めて、東京の「市街地」を駆け抜ける世界最高峰の自動車レースが見られる。電気自動車(EV)レースの最高峰「フォーミュラE」の世界選手権が、3月30日に東京・有明のビッグサイト周辺にて開催されるのだ。「100年に一度の変革期」と言われる自動車業界。自動車レースの魅力を発信するとともに、EV技術、環境都市・東京をアピールする機会となるか。1月17日にチケット販売が開始されるフォーミュラEの見どころと東京で開催する意義を、モータースポーツジャーナリストの小倉茂徳氏の解説を交えてレポートする。

*編集部追記:チケット発売は1月17日とアナウンスされていましたが、延期となった模様です。詳細は(公式サイト/日本大会のページ)でご確認ください。(1月17日AM12:50)

>>好バトルが期待できるフォーミュラEの魅力(写真全6枚)

レースに興味のない人にも“見せる”ために市街地を走る

「日本で開催していないのがおかしいくらいだったと思います」

 モータースポーツジャーナリストの小倉茂徳さんは、こう語る。「フォーミュラE」は2018年から日産自動車が参戦しているからだ(同グループのルノーが2014年から参戦。それを日産が引き継いだ)。

「ジャパンモビリティショー」でフォーミュラEのマシンを展示した日産(写真:©Taidgh Barron/ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ)

「日本でやってもいいよね、という声は以前からありました。ただ、フォーミュラEは『公道』を使うことから、さまざまな調整が必要だったのだと思います」

 国際自動車連盟(FIA)が設立したフォーミュラEのレースが始まったのは2014年。電気自動車の普及促進を目的に、主に都市部やリゾート地などの「市街地」でレースが行われてきた。これは、F1など大部分の自動車レースが、都市部から離れたサーキットを主なレース会場としているのと対照を成す。

 2024年シーズンのフォーミュラEには、11チーム22台が参戦している。駆動装置(モーター)を供給する自動車メーカーは7社(日産、ポルシェ、ジャガー、マセラティ、DS、マヒンドラ〈インド〉、ERT〈中国〉)で、この数はF1よりも多い(F1の駆動装置であるパワーユニットの供給は4社/2024年現在)。メルセデス、アウディ、BMWが2021年を最後に撤退したことがネガティブに報じられもしたが、入れ替わるように、マセラティとマクラーレンが2022年から参戦した。

 フォーミュラEの目的を小倉さんはこう説明する。

「フォーミュラEには電気自動車の可能性を広げること。それから、一般の人により広く知ってもらうという目的があります。いわば電気自動車とその技術の走るショールーム。だからこそ『市街地』の『公道』にこだわっているんです。車がないと行きにくいサーキットではなく、交通機関で気軽に行ける場所ならば、レースに興味のない人でも見に来てくれるかもしれないからです」

東京・六本木のけやき坂でデモ走行するフォーミュラEのマシン(2015年8月、写真:共同通信社)