東京都の自治体ではテストの平均点に20点もの差
佐藤:週刊誌「東洋経済」が東京23区および都内市町村部の学力調査の結果を公表したことがあります。それによると、トップの自治体と最下位の自治体では、100点満点のテストの平均点で20点もの開きがある。
全国の学力調査では、都道府県別の平均点の差はせいぜい5点程度です。都市部での教育の地域間格差がいかに大きいかを実感していただけるのではないでしょうか。
また、都市では一つの自治体内にたくさんの学校があります。例えば横浜市。公立の小中学校だけで600校以上あります。それらを一つの教育委員会で管理しきれるはずもありません。
一つの教育委員会がきちんと学校を支えられる適正規模は、20~30校程度です。そのような自治体では、教育委員会が学校に対して手厚い指導や援助を行っており、学びの共同体の学校改革は極めて順調に進んでいます。
──大都市の教育委員会は、どのようすれば学校と密接な関係を築くことができるのでしょうか。
佐藤:例えば横浜市ですと、現在はいくつかのブロックに分けて教育委員会の事務所を設置しています。しかし、まだまだ不徹底です。一つの事務所が管理する学校数は最大でも30校になるように配慮されるべきです。
この取り組みはまだまだ始まったばかりで、現時点では3ブロック。今後、ブロック数が増えていくことに期待したいです。
──学びの共同体の学校改革のためには、パイロット・スクールを地域に一つ設置することが重要であると書かれていました。 パイロット・スクールにはどのような役割が期待できるのでしょうか。
佐藤:あらゆる社会の変化や変革は、イノベーションによって起こります。イノベーションとは、全体が固着してしまたっときに、小さな一つの変化がすべてを変える現象です。
学びの共同体をもっと広げていきましょうよ、と言われることがあります。しかし、大切なことは多数になることではなく、未来を示す一つの学校を地域につくることです。
学びの共同体の学校改革は、イノベーションです。一つの学校が変化すれば、すべてがじわじわと変わっていくのです。学びの共同体のパイロット・スクールを私が最初につくったのは、1998年です。そのとき私は、これで世界が変わると思った。なぜなら、イノベーションだから。