サンタクロースって本当にいるの?――この季節になると毎年、この命題が世界中の子どもを悩ませ続けている。
クリスマス・イブの夜にプレゼントを届けるのは赤い服とナイトキャップをまとい、豊かな白髭をたくわえた高齢男性が8頭(あるいは9頭)のトナカイが引くソリで届けるという伝統的な説を信じる肯定派の子どもがいる一方で、「同居する保護者」「玩具販売業者からの宅配」「恋人」などとする否定派の子どもも少なくない。
しかし、以前は家庭や学校、書籍などに留まっていた情報源がインターネット上やSNSに拡大し、容易に入手できるようになった現在では、サンタの存在を信じたい子どもたちでも、その希望を持ち続けることが難しくなってきている。
それでも信じ続けたい肯定派たちの中には「サンタさんが来るまで起きている」「部屋に入ったら物音をたてるトラップを仕掛ける」といった努力や手間をかけたり、「録音して鈴の音を確認する」「ライブカメラを設置する」などテクノロジーを用いるなどして検証を試みる子どももいるという。
サンタ来訪の「証拠」を押さえた少女
そんな中、ついにサンタクロース実在の証明にDNA鑑定という科学捜査の手法が用いられ話題となった。アメリカのロードアイランド州カンバーランドに住むスカーレット・ドゥマトさん(10歳)がサンタクロースとトナカイのDNA鑑定を行うよう、地元警察に証拠品を提出したのだ。証拠品は、2022年のクリスマス・イブにサンタとトナカイへのお礼に置いておいたクッキーとニンジンである。
翌朝、それぞれがかじりかけの状態で残されており、スカーレットさんは速やかにファスナー付き食品保存袋に入れて保存、警察に依頼文書と共に提出した。ドゥマトさんは犯罪捜査ドラマが好きで、その情熱は自宅に証拠収集キットや試験管といった家庭用の犯罪捜査道具を揃えるほどという。
依頼文と証拠品を受け取った警察署はそれらをロードアイランド州保健局法医学科学部門に送り、分析を依頼したと翌年1月20日にプレスリリースで発表した。
(参考)Instagramに掲載されたカンバーランド警察署のプレスリリース
州保健局は分析の結果を24日にTwitter上で公表。同局は最新の技術と手法を用いたものの、サンタがドゥマトさん宅にいたかどうかについて「決定的な確証は得られなかったが、否定することもできない」と結論づけた。
この結果は、肯定派に配慮したものではないのか? そもそもDNA鑑定でサンタの実在を証明できるものなのだろうか? ここは専門家に忌憚のない意見を聞いてみたい。そこで、アカデミアなどの研究者に受託解析サービスを提供している株式会社ファーマフーズ アプロサイエンスグループで、さまざまな生化学的試験の受託サービスを担当する福田佳奈さんに話を聞いた。